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氷と砂糖


なんなんだろう、こいつは。という思いがアッシュの心をかすめた。
そう思わせた相手は今アッシュの目の前でにこにこと笑っていて、なにがどうなってそうなったのかさっぱりわからない。

「俺が好きだと?」
「うん」

おおきく頷いた目の前の相手、己のレプリカを見つめながら、今そんな話をしていたはずじゃないのだが、という至極真っ当な感想が浮かぶ。
ここは砂漠のオアシスだ。レプリカの体調を確認するために呼び出し一通り話した後なぜかルークは仲間たちを遠ざけた。
その後の発言がこれだ。
ふ、とアッシュは息を吐いた。

「そうか。で?」

その返答を聞いてルークはことんと首を右に傾けた。

「え? いや、それだけ。俺がお前をどうしようもなく好きだって言っておこうかなって」
「返事が欲しいんじゃねぇのか」
「いらないよ。俺はアッシュが好きだけど、アッシュはそうじゃねぇもん」

アッシュは、ルークからの想いを聞いて驚きこそすれ、特に感情を乱されることはなかった。
そもそも向けられる好意に対して、揺さぶられたことなどない。
それは、こと恋愛というものに対して心を割く余裕がないのも大きい。そのため通常で言えばとんでもない発言をしたルークを目の前にしても激高することもない。

「まさか、これも影響の一つか?」
「影響って?」
「いや、意識がかき乱されたりしねぇとお前は言った。なら、違うんだろう」
「うーん、それってアッシュのこと考えるとどうしようもなく胸がぎゅーってなるけど、そういうことじゃないよな?」
「……違うな」

ほいほいと思ったことを口に出すなと言うべきか、まさか周囲に言い触らしているんじゃないだろうなと確認すべきか逡巡したが、まぁどうでもいいことだとアッシュは結論付けた。

「俺、アッシュはもっと怒るかもって思った。だからいつかアッシュが知ってしまう前に伝えておこうと思ってさ」

そうはにかむルークは伝えられて本当に良かったということを隠そうともしない。
あまりにあっさりしていて、むしろ気になる。

「同性とか、完全同位体とか、気になるとこはねぇのかよ」

複数の問題をすっ飛ばしてないかと、呆れた様子も顕わに首を振るアッシュに最初は悩んだとルークは返答した。

「それは、気になった。当たり前だろ? でも、否定したってこの気持ちを消そうとしたって、だめだった。戦闘中ジェイドに怒られる位考えたんだ。それでもやっぱり、俺はアッシュが好きで、どうしても好きで、もう自分の気持ちに嘘ついたって仕方ないし」

要は開き直ったってことかとアッシュは納得した。

「アッシュにしたら迷惑以外でもなんでもねーだろうけど、そういうことだから。ごめんな」
「別に。勝手にしたらいい」
「あれ? なんでそんなに普通なんだ?」
「俺はそういったことで何かを感じたことがないから、な」
「ふぅん? あ、でも、ならこれからも今まで通り接してくれるってことだな! 嬉しいなぁ」

アッシュは、今まで通りというと怒鳴ったり、罵ったり、呼びつけたり、ということなのだが、それでもいいってかなり自虐に過ぎないかと思ったものの、恐らく切って捨てられるとか、今後一切接触しないとか宣言されると考えていたのだとしたら、嬉しいに入るのかもしれないなと他人事のように思った。





アシュルクアミダでシチュを決めた結果のうち2話目。
クール…でれって…なに?お題に添えてないなこれ!?
アッシュはクールより淡泊だし、ルーク開き直ってる。
うーん、書いたことないの難しいな。けど楽しいです!

2017.8.31