brightly shines ―4―















翌日の朝方、ルークは頭痛で目が覚めた。





(いてぇ……また、幻聴……?)





体を起こして、ふるりと頭を振っても痛みは離れない。

岩場での野営だったので体が少し軋むようだ。



周囲は薄く霧で覆われていて自分が、かなり早くに目覚めたことを知る。

左手を頭に添えて痛みに耐えていると視界の端で何かがちらりと横切ったように思えた。





(何だろう、魔物? でもそんな感じじゃなかった)





どうしても気になって、ゆっくり物音を立てないように立ち上がると

同じ毛布に包まっていたミュウがころりと転がり「みゅ……」と鳴いた。

少しヒヤリとしたがミュウはそのまま毛布に潜り込んで動かなくなったのでホッと息をつく。

ばれたらガイに酷く怒られるのは分かっていたが、

どうしても興味を抑えられずルークは霧の向こうへと歩いていった。











(この辺り、だったと思うんだけどな……)





やはり気のせいだったのだろうか。周囲を覆う霧でよく見渡せないが何も変わったものはない。

ふぅと息を吐いて来た道を戻ろうと踵を返したとき、突然手首を掴まれ強く引かれた。



「な!? ……っ」





大声を出しそうになったルークの口を素早く覆い耳元で小さく囁かれる。



「大声出すな。あいつらにバレんだろうが」

「……?」



どこかで聞いたことのある声だが、思い出せない。

手を口から離すが大声は出すなと言われたのでこくこくと頷いて了承する。

それを受けてゆっくりと手を離されたので慌てて振り向くとまったく予想外の人物が立っていた。





「え、おまえ……なんで……えぇと、アッシュ? だっけ」

「そんなことはどうでもいい。ここから先には進むんじゃねぇ」





ばっさり切られた挙句、進むなと言われてルークは少しムカっとした。

そんな訳には行かない。それでは何のためにここに来たのか分からない。





「んなの無理だっつーの! 俺はアクゼリュスに行って瘴気を中和す……っなんでもねぇ!」





うっかり苛々して口が滑り、今まで秘密にしていたことを零してしまった。

しかしアッシュはそれに特に驚くでもなく淡々と、どうやって中和する気だ、と逆に聞いてきた。

ここまでばれてしまってはどこまでばれても一緒だと思ったルークは超振動で、と答えた。

するとアッシュは軽く鼻を鳴らし首を振る。





「それは無理だ」

「はぁ……? ヴァン師匠はできるって言った」



それに溜息をついたアッシュは、そんなことができるならとっくに自分がやっていると顔を顰めた。



「アッシュが? アッシュも超振動1人で起こせるのか?」

「……あぁ。超振動で瘴気を消すことはやろうと思えばできることだ。だが…」

「じゃあやればいいんじゃねぇの?」

「屑が、続きがあんだよ。超振動で瘴気を消すには犠牲が必要だ」





犠牲。

そんなことは初耳だったルークは目を見開いた。

なにしろヴァンからそんなことは一言も聞いていなかったから。



アッシュはアクゼリュスを覆う瘴気を打ち消すには行使者と第7音素の素養を持つ人間50人程度の犠牲が必要であることをルークに話した。



「うそ、だ……ありえねえ……」

「……瘴気を分解して害のない物質に再構築しようとするなら、第7音素で瘴気を結合し直すしかない。

だがその過程で行使者も素養者も分解されるだろう」





アッシュの言葉がぐるぐると頭を巡る。





だってヴァン師匠は共にダアトへ行こうと言ってくれたのに。

命を落としたらそんなことできやしない。







一体どういうことだ。



アッシュが嘘を? それとも師匠が?







分からない。



わからないわからない!







「心地いい言葉ばかり信じてたら足元掬われちまうんだよ。……俺みたいにな」



「え……?」



自嘲するように吐き出したアッシュにどういうことかと尋ねようとしたが、

アッシュは話はこれで終わりと言わんばかりに背中を向けてしまった。



流れる赤い、髪。

そういえば目も自分と同じ色だった。





(赤い髪で緑の目……?)





しかも顔もかなり似ているようにルークは感じ、ざわざわとした落ち着かなさが全身を巡る。

もっとアッシュのことを知りたいと思うが、アッシュは多分共にはきてくれないだろうとぼんやり思う。

ルークは少しでも一緒に行きたいと思う自分に少し驚いた。

アッシュに会ったのは最近で(しかも印象最悪で)何も知らないというのに。







なんでだろう。







「アッシュ……」



確かめるように呟く。

返事を期待していた訳ではないが、それに反応し半分だけアッシュは振り返った。

なぜか嫌そうな顔をしながら。



「……どうしても行くというなら、気は進まないが……連れていけ」

「?」





意味がわからず首を傾げる。





「行くならおっさん連れてけってさ、少年」























NEXT

ヴァンを信じてはいけない。





2010、1・27 UP