a ray of hope ―5―















ところ変わって、ナタリアの私室。

しかし部屋の主の姿はそこに無く、座っているのはティアとアニス。

2人とも何か落ち着かない様子で座っている。



「ねぇティア。…ちょーっと変な感じだよねぇ〜」

「そ、そうね……」





ナタリアの私室で過ごすことは初めてではない。

どちらかと言えば頻繁にこの場所で会話を交わしていることは確かだ。頻繁とは言っても3,4ヶ月に1回くらいだろうか。

しかし王女、という立場を鑑みて考えればかなりの頻度であろう。

主な会話はやはり『彼』のこと。

誰が言い出したことでも無かったが自然とそれぞれの情報を交換するようになった。

…最後の方になると、どうしても他愛のないお喋りになるのだけれど。



「ナタリアの居ないこの部屋に自分がいることがなーんか変な感―…」

「遅くなりましたわ!」



ナタリアがカチャっと自分の手で扉を開け入ってきた。

後ろで年若いメイドが困惑している。



ティアは軽く目を見開き。

アニスは丁度紅茶を口に含んでいたので吹きそうになってしまった。



「ナタリア様……。そのようなことはメイドにさせて下さいまし。彼女達を困らせてしまっていますよ」

部屋の中でティア達の給仕をしていた年嵩のメイドがやんわりと嗜める。

「申し訳ありませんでしたわ。しかし急いでいるのです。貴女達、下がってよろしくてよ。夜遅くまでありがとう」

若いメイドに向き直り微笑んで退出することを許した。



これで部屋に残ったのは3人と年嵩のメイド1人。



「あ〜びっくりした!ナタリアったら自分で開けて入ってきちゃうんだもん!」

「そうね、お城で見たのは初めてだわ」

「だって……ちょっとお父様とのお話が長くなってしまって急いでいたんですもの」

少し赤くなりながら座る。

「お久しぶりのお転婆ぶりでしたね。ナタリア様」

控えめに笑みながら、紅茶を手早く整える。

「ラ、ラリーア!」

くすくすと笑うのは初老のメイド、ラリーア。集まって話をする時は決まって彼女が控えている。

本当ならば3人きりの方が都合が良いのだが王城ではそういう訳にはいかないからだ。

ラリーアは気性の穏やかな女性でナタリアの幼い頃から仕えている一人。

それゆえナタリアの性格は熟知している。



「ラリーア。これから話すことは他言無用です。よろしいですわね?」

「無論、心得ております」



ラリーアが少し離れた所に控えたことを合図のように、ふ、と雰囲気が変化する。











「……」

「…………」

「んー…」











「アッシュ、だったよね…?」









ぽとり、と落とされる大切な言葉。







「ええ、そう…思いますわ…」

「タタル渓谷では…その…」

「ねー…」



そう。どちらか分からなかった。

分からないというか、どちらとも取れたのだ。

ルークにしては落ち着き、アッシュにしては穏やかな雰囲気。だから誰も名前は呼べなかった。

アルビオールに乗りバチカルへと戻ってくる数時間で、あぁ、アッシュだ。と漠然と感じた。

それは3人とも同じであったらしい。



「アッシュが帰ってきたと言うことは、大佐の理論が正しかったということになるのかしら…」

「……」

「そう…なのかな…」



ジェイドから完全同位体に起こり得る大爆発についての説明は受けている。

もし帰ってくるとしても、それは1人だろう、と。





「でも、信じなくっちゃ!」

「そうですわ。私たちが諦めてしまっては…いけませんもの」













「…帰って、きてくれるかしら…」











小さな小さな声で紡がれた音。

音と共に零れ落ちる透明な雫。



「ティア……」

「あ…ご、ごめんなさい!こんなつもりじゃ……っ」

「大丈夫。大丈夫ですわ。アッシュは帰ってきたのです。ルークだって…」









そう。ルークだって。









「…明日、アッシュのところに行きましょう。彼は何か知っているはずだわ」

凛とした声に頷く。



「そうと決まればもう寝なくては。もう…この時間では宿屋は閉まっています。客室を用意させていますからそちらでお休みになって」

「えぇ、ありがとうナタリア」

「きゃわ〜んvお城のお部屋だなんて嬉しすぎ〜っ」



アニスのいつも通りの反応に幾分か場の雰囲気が和らいだ。













…すべては、明日に。







3人は同じことを思い、眠りに落ちていった。









NEXT




…アッシュが出ない。

でもガイ編と女の子3人編は入れたかったので満足です…!



2006、9・11 UP