「あちー……うー…あちーよ〜…」

「あ、この机冷てーかも〜…」





「…でも暑いーやっぱり暑いーあつ……」

「うるせえ!」

延々と続く言葉にアッシュがキレた。



「暑い暑いと聞いてるほうが暑いだろが!」

「…………悪ぃ……。でも暑いんだよ……」



へにゃりと机に頬をとつけてなついていたルークはアッシュに顔を向けずに言った。

ペタリと上半身を伏せたままの言葉と覇気のない声にアッシュは眉をさらにしかめる。



「ルーク?」

「……なに、アッシュー…」





反応が遅い。





「お前……」



アッシュはルークのそばに近づき跪いて顔を覗きこみ、ぎょっとした。

顔を赤くしてこちらを見る目は茫としていて、しかも幾らか辛そうに見える。

しかも汗をかいていない。



「お前……いや、少し待ってろ」















「ほら、飲め」

部屋を出たアッシュはいくらかもしないうちに戻ってきた。

ルークの目の前に置かれたのはアイスレモネード。



「……わー冷たそ〜うまそー…」



くたりとした雰囲気のままルークはグラスを手に取るとカラン、と氷がぶつかる涼しげな音が控えめに部屋に響く。



「ん……」

さらりと喉を滑っていく爽やかなレモネードは体に染み渡るように感じた。

こくりこくり、と美味しそうに飲むルークの姿を見てアッシュはそっと息を吐く。









「美味かったぁ……」

最後の一口を飲み終わったルークは嬉しそうにふわりと笑ってグラスをテーブルに戻してアッシュを見た。



「そうか」

「ありがとな、アッシュ。暑いのは変わんねぇけど、なんか楽になった」

「だろうな」

「……?」



そのアッシュの言葉にルークは首を傾げた。



「お前、今日水分取ってたか?」

「水分……?朝に……」

朝のことを思い浮かべる。…飲んだは飲んだが。





「…ひとくち」





言うとアッシュはなんとも言えない表情になる。

「バカが……。この暑い中水分を摂取しなけりゃしんどくなるに決まってるだろうが」



ルークはハっとしたように目を見開いたあと俯いた。



「そ…っか…そうだよな……」

「次から気をつけろ」



こくりと頷いてそろりとアッシュの顔を伺った。



「怒ってる、よな?」

「怒ってねぇ」

「うそ」



実際呆れてはいたが怒ってはいないので否定する。

くしゃくしゃと頭を撫で回してやるとルークはやっと笑った。

「次は気を付けるな!」

「ああ」

「それにしてもやっぱり暑いな〜」

そう言いつつ空のグラスに手を伸ばし、この暑さで唯一冷たい氷を口に放り込み口の中で転がす。



「つめへー」



もごもごと頬を膨らましながら、目を閉じて冷たさを堪能する姿にふと悪戯心が沸いた。



「あー…ひんやり〜……っ!?」







唐突に、熱を感じた。……唇に。







「え……っちょっ……ん!」



不意討ちに驚いて反射的に離れたが、頭に回された手がそれを許さない。

冷たさばかり拾っていたはずの口は、いつのまにか真逆の感覚を覚えて。





口の中にあったはずの氷は姿を消した。



暑い、暑い日の、できごと。

















「そこからは!?」なとこで終わってて、すみません。





2008、8・7 UP