愛しい君 ―1―















(今、こちらを見た…?)

まさか、と思う。

でも。



「…ヴァン。こいつには意思はあるのか?」

「意思?そんなもの。これはただの人形です」



師は侮蔑の色もあらわに笑う。









―俺から造られたものに対してなんて言い草だろう。勝手に情報を抜いておいて!









俺の沈黙を同意と受けとったのかヴァンは更にこう言った。

「秘預言で死ぬのはこれで十分。ルーク様は必要な方なのですから」







苛々する。

死ぬと詠んだ預言も。



死にたくないと思う自分も!



死にたい訳じゃない。

だからといって身代わりを立てるなど。そんなことが許されるか!

でも俺は死ねない!!







「さぁ、ルーク様。いつまでもこのような所にいる必要などありません。上へ戻りましょう」

「……もう少しここにいる」



ヴァンは先に戻っていると言い、残ったのは俺と。





(レプリカ…俺の、代わり……)





じっと細部まで見る。本当にそっくり…いや同じ、だ。

「俺、は、どうすればいい…」





水槽に右手で触れて俯く。どうしたら、どうすれば。









どれくらいそうしていただろう。

ふっと指先に温もりを感じた。



「っ!?」



硝子越しに触れる右手と左手。



交わった視線。





俺から生まれた者が。

それはそれは綺麗に。





――微笑んだ。









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2007 10・14 UP