「う〜……」
中庭の向こうからよろよろと覚束ない足取りで近付いてくる。
正直危なっかしくてこっちはハラハラし通しだが……。
バランスを崩しそうになるたび、ハッと手を伸ばしそうになるのをなんとか我慢する。
あぁ、なんて危なっかしいんだ!!
「あしゅ」
俺の所まできて、嬉しそうに抱きついてくる……のはいいんだが、
全体重をかけられると受けとめられない。
……ほとんど同じ身長体重なんだ、しょうがねぇだろ。
べしゃっと2人で倒れるのはいつものこと。
「だいぶ、歩けるようになったな。えらいぞ」
柔らかい髪を撫でる。これもいつものこと。
どうやらルークは撫でられるのが好きらしい。
撫でられるとぱっと笑ってそれはそれは嬉しそうに、すり、と擦りよってくる。
抱き締めるとルークの体はほかほかと暖かくてどれだけ頑張ったか分かる気がした。
「本当にルーク様は、ル……アッシュ様がお好きなんですね」
ふと影が落ちて上をみると太陽を遮るようにして、
タオルを持ったガイが苦笑して覗きこんでいた。
練習の最後はいつもこうして2人転んで汚れるので、
ガイが塗らしタオルを持ってくるのもまたいつものことだった。
タオルを受け取って軽くふく。
「さぁルーク様。綺麗にしましょう。じっとしててくださいね」
「うー。あい?」
「ガイです。ルーク様」
くすぐったがって逃げようとするルークを膝に乗せてあやしながら、ガイは器用に拭いていく。
ガイはルークをあやすのがうまい。
泣きそうになったルークの機嫌もすぐに直すことができる。
「さ、できましたよ〜…って、あれ……」
途中からやけに大人しいと思ったらルークはガイの上着を握りしめてうとうとしていた。
そういえば今日はいつもよりたくさん歩いたかもしれないな。
「疲れたんだな……。運んでくれるか、ガイ」
「はい」
「ルーク様。お部屋につきましたよ」
「ん〜……」
「お昼寝しましょうね」
いやいやと言わんばかりにルークはぐずりだし、ガイが困ったように眉尻を下げた。
「んん……? なんででしょうね。アッシュ様」
「さぁ……俺には眠そうに見えるが……」
「俺にもそう見えます。困りましたね」
どうしたというんだろう?
眠いには違いないはずなのに……。
のどでもかわいたんだろうか?
そう考えていたら、ルークが泣きそうな顔で手をこちらに伸ばしてきた。
……これはあれか、もしかしなくても一緒に寝ろアピールか?
「あしゅー…」
やっぱりそうなのか!