延々と続く報告に瞼がどうしても重くなってきた。

まずい。これはまずい。



目をぐわっと見開ければ少しは気が紛れるのに、とは思うがこのような場でそんなことできるはずもない。

あくびを噛み殺し意地で目を開け続ける。

ちゃんと開けているのに焦点が勝手にぶれていく。

これは本気で眠いのだなと他人事のように思う自分がいて、不思議だ。





(……ねみぃ……)





延々続く貴族のお説が(報告はどこ行ったんだよ、終わったなら下がれよ)単調で、どうしても眠気が襲う。

こんなことではいけないと思い太腿をつねってみたりしているのだが無駄な努力であるようだ。





(本気で、まず、い……)





もういっそ一瞬だけ目を閉じてほんの少しだけ寝てしまえ、という甘く魅力的な考えが脳内を満たしていく。

眠気に支配された頭でもうダメだとめげかけた時、キンッ、と軽い痛みが頭を駆け抜け横に座るアッシュが回線を繋いだのだとハッとした。



しかし、通常の痛みより数段軽くアッシュが意図して完全に繋いでいないのだと知れる。

鈍く痛むこめかみにあえて意識を集中させると眠気が少しづつ飛んでいくようだ。

あまりよくない眠気覚ましだとは思うが今はありがたい。







(あー……その、意識は繋がってないかもしれねーけど、ありがとな……。アッシュ……。いい感じに目ぇ覚めた)







アッシュからの応えはなかったが、ふ……っと鈍痛がなくなったので意図は伝わったのだろう。



(後で怒られるかな。でもしょうがねー……。怒られよう)













「寝そうになってやがったな」

「う。助かったよアッシュ……」



与えられた部屋に入るなりアッシュに苦笑いされた。

上着をゆるめて、固められた髪をかき回してようやく人心地つく。



「いや……気持ちは分からんでもない。さすがに眠気はなかったがあいつの話はくだらなすぎて欠伸を噛み殺すのに苦労した。

喋りが壊滅的に下手だったな……。あれなら報告書で十分だ」



ソファに体を埋めると、抑えに抑えた眠気が襲ってくるようだ。

ふと、閉じた瞼が暗くなりアッシュが前に立ったな、と思いゆるりと瞼を持ち上げる。

片足をソファに乗せたのだろう、体の右側が少し沈んでいく。





「う、ん……? アッシュー…」





柔らかい眠気と頬に感じるアッシュの手の体温、その相乗効果で妙に穏やかな気分だ。

腕をのろりと持ち上げてアッシュの服を掴む。



すり、頬の手に懐いていると少し笑われた。





「んー…?」

「熱いな。眠る前にそうなるのは、ガキの証拠だぜ?」

「……うるせー。しょーがねー、だろ〜」

「寝るなら服を着替えろ」

「んー、ちょっとだけ、だから〜……だいじょぶ……」





すぅ、と自分が寝息を立て始めているのが分かる。

意識がふわりとほどけていき、じきに眠りに落ちるのだと自分でわかった。





するりと離れていく体温を惜しみながら、心地よいまどろみに身をゆだねた。




















短い……。雰囲気が伝わればいいのですが!




2013、9・9 UP