「はぁ? なんでかなんて知らねーよ」

「……俺もわからねー」

「私たちはもっと意味が分からないんですがねぇ」



ジェイドが珍しく真顔だ。

世界がひっくり返るような事象がここ最近続いているとはいえ、今目の前で起こっていることはあり得ないことだった。



「なぜルークはこう、いえ、いつ……2人になってしまったんですの?」

「昨日の朝おきたらこうなってたんだ」

「そーそー。目の前に自分の顔があってびっくりした」

「えぇぇ……原因不明〜?」



ガイがこめかみを抑えながら「レプリカ……じゃないな」と呟いた。どうみてもルークそのまま2人だ。



この場にはアッシュもいる。



回線を開こうとしたらなぜか繋がらず、さらに気配が乱れていたため何かあったのかと思い比較的近くにいたので合流したが、

当のルークはなぜか宿の部屋に籠って出てこようとしない。

仲間も困り果て、アッシュも来たことだし(?)と宿屋の主人に鍵を借りて開けるという強硬手段にでた。



すると現れたのは「2人のルーク」だったのだから怒ろうとしていた気持ちは驚きに上書きされてしまった。

髪の長いルークと、短いルークが同時に首を傾げる。





「どうすっかな、って相談してたんだけど……」

「一晩寝たら元に戻るかなとも思ったけど……」



「「ダメだった。どうしよう?」」





全員が天を仰いでしまった。どうしたらって、そんなこと知るわけないだろう、というのが共通の思いだ。





「「なぁ、アッシュ?」」



「俺にきくな……」





「あーごめん。ちょっと気が動転しすぎてるから落ち着けてくるな……」

「私も……。ちょっと歌ってくるわね……」

「あたしもー」

「わたくしも失礼しますわ。また参ります」



ジェイドも「よろしくお願いしますね」とアッシュに言葉を残して去った。







「ティア……『歌ってくる』って……」

「動揺しすぎだろ……」





ルークはおかしな言葉で部屋を出て行ったティアを唖然として見送った。

顔を見合わせると、途端に不安が襲ってくる。



自分たちはずっとこのままなのだろうか?



その時にアッシュがため息をついたので2人してビクリと体を揺らしてしまい逆にアッシュを驚かせた。





「ア、アッシュ……」

「俺たち……」

「……なんて顔してんだ。……来い」



アッシュが腕を上げて呼んだので、髪の短いルークは側に寄り躊躇いがちに抱き着いたがもう1人のルークは、

どうしようか悩んでいる様子で動かない。



「おい」

「……んだよ」



手招きされたことで吹っ切れたのか、ぶつかるように飛び込んだ。

アッシュが2人のルークをそれぞれの腕で抱き込んで「とりあえず落ち着け」と軽く背中を叩くと2人の体に力が入り、

泣きだしたことが分かったが特に何も言わずそのまま背を撫でた。



先ほど仲間たちと接した時は平静を装っていたが、本当は不安だったのだと知れる。





「お前たちはどうしたい?」

「どうって……」

「1人に戻りたいか、2人でいたいのかってことだ」



それは2人で散々考えたことだったが、思いはやはり同じだった。



1人に戻りたい、が答えだ。



理由は「俺たちは1人だから」というアッシュにとってはよく分からない返事があった。



「俺らとアッシュは完全同位体だけど、別の存在だ。アッシュとは別々に存在したいと思う。だけど……」

「俺たちは本当に同じ……なんだ。分かれてるのはイヤだ」



当人たちが言うには、どうやら色々なところでリンクしているらしい。思考までまったく一緒ではないようだが概ね同じだとか。



「感覚は共有してるかな……遮断しようと思えばできなくもないけど」

「回線と似てるな。今も共有してるのか」

「ああ。っうひゃ!?」

「んんっ!」



試しに髪の長いルークの首筋をぺろりと舐めてみると、そうしていないルークからも声が上がった。



なるほど。嘘ではないらしい。



「バカ! やめろよ!」

「びっくりすんじゃねーか……!」





ばっと離れて抗議する様が面白いと思ったのが顔に出たらしく、じとっとねめつけられる。





「「俺たちで遊ぶな!」」



「遊びがいはありそうだけどな。やめておいてやる」





明らかにほっとした様子を見せた2人に対して、逆にアッシュは、本当に悪戯してやろうかと思いかけた。




















続……かない、と思う。
ぽにゃはアレな方向には書けないんですが、この流れって……とか思ったり。
誰か続き書いてくれたらいいのに!(他力本願とはこのこと)




2013、10・12 UP