「ティア!アニス!久しぶりっ!」

公爵家の玄関にパタパタと駆けてきたのはルーク。

走るリズムに合わせて揺れる髪がそのままルークの感情を表しているようで、自然と笑みが浮かぶ。



「えぇ、久しぶりね、ルーク」

「おっ久〜♪」

「前に会ったのって…2ヶ月前だっけ?」

もっと久しぶりな気がするが確かそれ位だ。



「ん〜…フローリアンに会いにきてくれた時以来だから、それ位だね〜」

「元気にしてるか?」

「フローリアン?元気いっぱいだよぅ!鬼ごっこに付き合う身にもなって欲しいくらい〜!」

そう口では言うもののアニスは笑顔だ。

そんなアニスを見てティアも笑う。



「あ…っと、こんなとこじゃ何だな。あっち行こうぜ」









「はぅぅ〜美味し〜い!」

ケーキを口に運んだアニスはあまりの美味しさに両手で頬を挟んで幸せそうに笑む。

中庭にテーブルを出しての小さなお茶会。

「アニスはほんとに甘いもん好きだな」

「ぶーぶールークも好きなくせに〜」



「う…」



言葉に詰まるルークにティアが、否定できないわね、と笑う。

「でも本当に美味しいわ…それにこのカップ…可愛い…」



「ほんとか?良かった!」

「ナタリアは…来れるのかしら」

「んー…どうだろ…。難しいんじゃねぇかな……」



急な用事が入ってしまった、と連絡があったから今日は来れないかもしれない。

残念そうな顔をするティアを見て眉を下げたルークだったが、その後ろに見えた姿を確認し微かに笑う。



「今日な、もう1人来るんだぜ」

「え?」

「そうなの?誰だれ?」



「俺さ」



「「!」」



後ろから―それこそ背後近くからの声に2人が飛び上がる。

「ガ、ガイ!」

「びっくりした〜心臓に悪いぃぃ〜…」

胸をおさえる仕草をしてみせたアニスに、悪い悪いと笑いながら二人の向かい、すなわちルークの隣におさまるガイにルークは破顔した。



「ガイだー」



わざわざ口に出さずとも誰が見てもガイなのだが。



「ようこそおいで下さいました。ガイラルディア様。お飲み物は何になさいますか?」

側で控えていたメイドが伺いをたてる。さすが公爵家に仕える者だけあって丁寧で洗練された動きだ。

「久しぶり、マリー」

「お久しぶりでございます」

「紅茶を貰えるかな?それと敬語は必要ないと皆にも伝えたろ?」

マリーと呼ばれたメイドは躊躇ったように口を開く。

「ですが…」

ガイがどうしたものかな、と考え出したとき向こうから歩いてくるものが映った。



「…そいつや俺の前でガイにタメ口をきいたとしても誰も咎めん」

「これは…アッシュ様」

振り返って礼をとる。



「えっ!そんなこと気にしてたのか!?いいよ!マリア。そんなん気にすんなよ」

「父上の前ではまずいが、な」



二人の許しを得て安心したのかマリアはどこかほっとした顔をして微笑む。

「アッシュ様、ルーク様、お心遣いありがとうございます。……元気そうで何よりだわ、ガイ」

ぐっと砕けた口調。

「あっちでも相変わらず使用人みたいなものだけれどね」

「そんなこと言って……。伯爵様が使用人な訳ないでしょう?」



以前のように話す二人がなんだか嬉しくてほわりと笑ってしまう。



「ルーク、ルークっ」

「んぁ?」

成り行きを見守っていたアニスが指先をちょいちょい動かしてルークの注意を引く。

「なんかいい雰囲気なんだけどっ!」

なぜか爛々と目を輝かせている様子に首を傾げつつ、そうか?と返すしたところでマリアと話終えたガイが、ははっと笑ってアニスに言う。



「俺とマリーは同じ時期屋敷に入ったんだ。そりゃ他の皆よりは気安いけど、アニスの思っているような関係じゃないぜ」

なぁんだ…と言わんばかりにテーブルにペタリと懐く姿に小さく笑う。



「アッシュ仕事終わったのか?」

「書類に捺印するだけだったからな」



事もなげに言うが、アッシュは1枚1枚読み納得しなければ捺印しないことをルークは知っている。

この短時間で終わる量ではなかったと記憶しているのだが。



(この集まりに参加するため、頑張ってくれた?)





俺が楽しみにしてたから?ああ、でも多分、きっと。



そういうことなのだろう。





「ありがとな、アッシュ」

「ふん」

さぁ楽しいお茶会、始めよう。













私も参加したいのは山々ですが、どこぞの陛下を見張らないといけないので。

公務を放り出しかねませんからね。

byジェイド

2007、11・11 UP