昼間の暑さが嘘のような、まだ寝るには早いそんな時間。



今日はもう遅いから野営の準備に取り掛かりましょう、と言うリフィルの言葉に異を唱えるものは無かった。

慣れない砂漠で皆疲労の色が濃かったからだ。



その中で唯一この砂漠超えをもろともしていないクラトスは火の番を。

コレットやジーニアスは余程疲れたのだろう。砂避けに張ったテントの中で既に眠りについていた。

リフィルは寝てはいないだろうが何やら書を読んでいるようだ。



そして。



(ロイド…)



自分の真向かいでこくりこくり、と浅い眠りに入っているロイド。

先程まで剣術の初歩についての会話していたのだ。

強い光を宿した目は今は閉じられ、それに昔の面影を見つけて。



(ロイド…お前は本当に)







―――ロイド、お前なのだな―――







失ったと、この手から滑り落ちてしまったと思っていた大切な、大切な息子。

まさか、と思った。生きているはずがないと。



しかし。



間違いでは無かった。

確かに。

確かにロイドだ。



自分の思考に深く潜っているうちにロイドの船漕ぎは酷くなってきていた。



「このままではここで寝かねんな…」

小さな声で呟くと同時に立ち上がりロイドの横へと移動する。



「ロイド、ここで寝るな」

「……んー……すー…」





「………はぁ」

軽くゆすってもロイドは起きない。

さて、どうするか。



「…キューン」

心配そうなノイシュがクラトスの腕に鼻を擦り付ける。

テントにロイドを連れて行って欲しいとでも言うように。

「ノイシュ……」



(仕方がない、な)



ロイドの膝にかけてあった布を落とさないよう気を付けながら膝裏に手を差し入れ持ち上げる。

「…ぅん…………」

少し寒いのか温もりを求めるようにすりよってくる。



ロイド、強くなれ。

生きろ。そして、私を……。



様々な思いが伝わればいいと、額に小さくキスを、した。











クラロイの日記念…。





2007 9・6 UP