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ultimatum 2


「そんな……っまさか!?」
「あんな譜歌で〜? ありえないっ」
「ローレライ……なのか?」
「……」
「昇っていく光を見ましたけれど、色合いが異なりますわ……! でも、本当にローレライですの?」

ヴィントヘイムは驚く闖入者達に向かって慈悲深そうな笑みを向ける。
その虫さえ殺さぬような見た目は、まったく内面と比例してしていないのだとアニスから聞いていた。

「これはこれは……。各国の方々よくおいで下さいました。いささか騒いでおられたようですが、この素晴らしき瞬間に立ち会うためだとわかっておりますとも。
ご覧下さい。ローレライは私の声に答え再び御姿を見せられた。やはり、ローレライは地上にあるべき神なのです! そもそも預言を失ったことが大きな間違い。ローレライよ、その大いなる力で再び導きを与え給え!」
「お黙りなさい。騒がしいですわ。要は結局、預言が目当てですのね。愚か者! 世界を今度こそ沈めたいのですか!」
「そんな恐ろしい顔をされるものではありませんよ。ナタリア王女」
「はぐらかさず答えなさい」
「ティア。ユリアの血を引くあなたならわかるでしょう。預言がいかに人々に必要とされているか……。消滅預言? えぇ、確かにありましたね。ですが、こうは思いませんか。生き残る術の預言があると。そう、私は確信しています」

夢見るように手を広げたヴィントヘイムは陶然と背後の焔を見やったがジェイドの声によって再び一行へと顔を戻した。

確かに会話をしているのに、妙に掴めない。なにかがずれたままである感覚がする。

「仮にローレライと契約し再び地殻に押し込めたとしましょう。すると数年前まで存在していた預言により消滅預言の強制力が復活しますが、それをあなたはどうするつもりですか?」
「新しい預言で上書きするのです。古い消滅預言の効力は発揮されない。何の問題もありませんよ」
「非現実的だな。誰が詠むんだ? お前か? 導師と同等の力があるようには到底思えないね」
「何を仰る。もちろん私が詠みますとも!」
「あんた、バカ? できるわけないじゃん!」
「できるのですよ。アニス。確かに私の預言士としての能力だけでは難しいことは明らか。第七音素を大量に必要としますね。しかし逆に考えられませんか? それさえあれば私でも詠めると」

この世界にはもう、溢れる程の第七音素は存在しない。
ヴィントヘイムの言葉は破綻しているように思えたが、1つだけある可能性に思い至ってアニスが「まさか!」と叫んだ。

「おわかり頂けましたか? おそらくその通りですよ」
「レプリカを第七音素の代わりとするつもりですのね……」
「ふふ、そのために、集めたのですから」
「フローリアンに近づいたのも……そのため……! 許さない! そんなことさせないんだからっ!!」

アニスの激昂を合図に各自武器を構えたがヴィントヘイムは優しげな笑みを絶やさない。
ゆるりと右手を上げて留めるような仕草をした。

「こちらにはローレライがおわすのですよ。無駄なことはおやめなさい。召喚した私が望まぬ限りローレライは地上にいらっしゃるのですから」
「……契約も結んでいないのに大した自信ね」
「ティア、皆さんもおわかりのはずだ。私の意識を失わせたとして、どうやってローレライを音譜帯へ送るつもりです? ヴァンの時とは何もかも状況が違うのですよ。貴方がたにはローレライの鍵はない。あぁ、以前解放なさった時とは人数も違いますね。肝心の英雄がいらっしゃらないではありませんか! あは、あはははは!!」


勝ち誇ったような不快な笑い声が高い天井に木霊する中ティア達は動けなかった。
正直どうすればいいのか、決めかねていたというのが本当のところだ。
膠着した中ヴィントヘイムの背後にある焔がふと明滅したがそれに気付いたのはティア達のみだ。ヴィントヘイムは背中を向けており気付きようもない。


「なにも、そうなにも! 貴方たちにできることなどないのです!!」


瞬間、焔は2つに別れた。

見る見る形を鮮明にしていく2つのうち向かって右側が思いっきりヴィントヘイムを蹴飛ばす。



「誰がお前の思い通りなんかになるかっつーの!」



大きな声がわんわん、と天井に響く。

仲間達はその声にハッとして2つの焔を凝視する。あの、声。揺らぐ色合い。
次第に鮮明さを増す姿。
赤い長い、髪。すっと同時に開いた目は焔を内包したように一瞬煌めいて、そして仲間たちに笑いかけた。

見紛い様もない姿にナタリアがひゅっと息を吸って口を抑え、あまりの驚きでかトクナガが小さなサイズに戻りアニスが地面にペタリと座ってしまう。

無様に祭壇から転がりおちたヴィントヘイムが、がばりと起き上がり振り返るとそこには焔の光を纏った人物が2人立っていた。

「な……っ!? な、んだと……!?」
「人数が足りないとか言っていたか?」
「最初からここにいるぜ!」

どこか反響したような声だが、間違えようもない。

そこのいるのはアッシュとルークだった。