「好きな人同士ってことは、両思いってことだよな?」



マルクトに滞在する間与えられた部屋に下がって、首元がきっちりした礼服を緩めながらルークは言う。

よほど苦しかったのか大きく息をついていた。



「……そう、だな」

「ってことは俺たち恋人?」





「……。そういうこと……なんだろうな」





少し間が空いたのはアッシュ自身よく分かっていないからで、それはルークにおいても同様だった。



アッシュはファブレ邸にいた頃ナタリアと幼い心を通わせてはいたが、

それはまるで婚約者同志と言う思いからくるまるでおままごとのようであったし、

神託の騎士団では愛だの恋だのそんなものは頭にもなかった。



ただただ、いつの日か陽だまりへ帰るために。



居座るやつへの復讐を胸に抱いて。





そこまで考えて、目の前のかつて憎んでいた相手を見る。



復讐もなにも、結局こいつは何もしてはいなかったと最近気づいた。

生まれたのも「ルーク」としての立場に置かれたことも、何らこいつの意思ではなかったのだから。

よく分からないとでかでかと顔に書いてあるルークは、そもそも生まれてからそんな世界とは無縁に生きてきた。

あの隔絶された屋敷で育ったのだから無理はない。





二人して誰かと想い想われる、ということがあまり実感として湧かないのだ。







「んー、よく分かんねぇ」

「あぁ」

「でも、最近アッシュが色々優しくて嬉しかった。一緒にいたり同じベッドで寝ても怒んねぇもんな。

な、アッシュは俺といるのイヤか?」



以前なら嫌に決まっているだろうがと罵声を浴びせていただろうことが容易に想像できる。



ところは今はどうだ?



「いいや」

「そっか。なんか……嬉しいな」



そうしてにこにこ笑うルークだったが、はたと止まって首を傾げた。





「ところで恋人って何すんの」



「……」





そりゃあ、アンナコトやソンナコトもするだろう。恋人なら。

ただ、いくらアッシュでもそれを実年齢10才に満たないルークに言うのは躊躇われる。



「あ。あれか! 手ぇ繋いだり、くっついたりか!! 街で時々見かける……」

「……まぁ、そうだな」



まぁ、間違ってはいない。



「よし、んじゃさっそく……アッシュ、手」

「これだと鏡だろう」



ルークは手のひら同士をぴたりと合わせたので、これでは手を繋いでいるとはいえない状態だった。



「んん? あれ、なんか違うな」



アッシュは溜息をついてルークの腰を引き寄せた。

ルークの思うようにさせていたら日が暮れてしまうと思ったのだ。

これまで以上にお互いが近い。

寝ていた時、近づいていたかもしれないが、それとこれとは意味合いが違う。

ルークもアッシュの背中の手をまわして大人しくしていた。







「んーアッシュ……。アッシュ、だ」







唐突にぎゅっと抱きしめてきたので、何だと思うとそんなことを呟いてた。



当たり前のことだ。今目の前にいるのは俺だ。



そしてこの腕の中にいるのはルークだ。





……ルーク、だ。









少し体を離すと、ルークははにかむようにこちらを見てきた。

そしてゆっくりルークの顔が近づいて頬に柔らかい感触。





「あれ? 違った……?」

「いや、合っているには合ってるが、こっちの方がいい」



少し触れ合わせて離れる。







初めて触れた。

触れてみて分かった。





もう離れられないのだ、と。





「いっしょに、いよう、な」







その言葉が耳に心地よかった。



















天然ダブルがくっつくまで。
お互い経験値がないのです。





2011、3・21 UP