チーグルになったルークの話です。









「るく!」

「…………」

「るくく?」

「………………」









これは何の冗談だ!









おっとりとシュザンヌがそれを抱き上げ髪を梳く。



「まぁ、随分可愛らしい姿になりましたね」

「るく?」

「あらあら、小さいお手々」



アッシュはその姿を見て卒倒しそうになったというのに。

母の強さを再認識する。

しかし普通は成人近い人間が(レプリカで精神年齢が半分でもだ!)

5歳程の大きさになり、それプラスチーグル耳が付いていれば誰だって驚くはずだ。

しかも「るく」としか喋らないなんて!



「るく……?」

「いや、なんでもない……」

「るく、るくく、く?」

「何言ってんのか分かんねぇよ……」



そうアッシュが言うとルーク(多分)は頬をぷ〜っと膨らませてシュザンヌの腕から抜け出し、

たたたっとどこかへ駆けていき、戻ってきたときには左手にミュウを鷲づかんでいた。

憤然とした様子のルークが目を回しているミュウの胴からすぽりとソーサラーリングを抜き左手首にはめる。

……まさか、と思うのとルークが口を開くのは同時だった。





「やっと喋れたるくー!! って、あれ!? なんか変な語尾がついてないるく?」





なんだその語尾は。



「…………うぜぇ……」



アッシュの素直な感想が洩れると同時にルークの蹴りが飛んできた。



「うぜぇ言うなるく! 俺だってうぜぇ……っ……るく。どうしてもつくんだっつーの……るく!!」



頑張って「るく」と言わないようにしているだろうルークの努力空しく、妙な間が空いただけだった。

悔しそうにしながらキッとアッシュを睨んでいるが、涙目でしかも5歳児サイズでは凄みも何もあったものじゃない。

みるみる涙は膨らんで、ぼろりと落ちた。



「る、るく……っ、う、ふぇえええ……」







泣き方まで退行してんのかよ!











「どうしてこんなことになったるく?」

「俺が知るかよ……」



ルークが5歳児サイズ+チーグル耳になって2日目。

寝たら治るかも、という願い空しくルークは朝起きてもこのままだった。

前日何が原因か少し話し合ったものの、ルークが凹みすぎていたのでまともな原因究明はできていない。



「俺はいつまでこんな格好なんだっつーの……るく……」



しょんぼりと肩を落とすルークを見やる。

小さい背中だ。

くるりと丸まっているからさらに小さい。

首が細い。あの細さで小さい子供特有の大きな頭を支えているのが不思議なほど。

髪色と同色なチーグルの耳さえ無ければ、ただの子供に見える。

知らず手が伸びて、抱き上げてしまった。

ハッと俺は何をしてんだと思わなくはなかったが、既にルークは腕の中だったのでまぁいいかとも思う。

右腕に座らせるようにして抱き直して顔を見るとルークはきょとりと目を真ん丸にして俺を見ていた。

自分の行動に我ながら訳が分からない。

ただ、言いたいことがあった。



「どういう経緯でそんなナリになったのかは分からねぇが、なっちまったもんは仕方ねぇ。それより楽しめ」

「楽しむって?」

「……お前はその年代ぶっ飛ばしてんだろうが」

「あ」





あぁ、まったく自分らしくねぇことを言っている。





「そ、か……楽しんじゃえばいいるく……?」



頷いてやればぱぁっと嬉しそうな顔をして抱きついてくる。

正直耳元で嬉しげにるくるく言うのはやめて欲しいのだが、

ミュウの『〜ですの』と同じで自然に出るらしいので諦めるしかない。

……まぁ、そのうち戻るだろうから我慢してやるか。

















唐突に思い浮かんだ話がこれって……。






2009、6・16 UP