「……っんだこれ」



呆然。

そんな言葉がしっくりくるような。



「いや、なんだと言いたいのはこちらの方なんだが……」



困ったように笑うガイに目もくれず、ルークはその紙に釘付けだった。

ファブレ公爵家子息ルーク・フォン・ファブレ主宰の闘技大会が開催される旨の案内状を。



「ピオニー陛下が面白がってなぁ。自分が行く! と王宮を飛び出す勢いだったんだが……。

そればかりは思いとどまって下さいと全員で体を張ってとめたんだ。んで、代わりに俺がきたってわけ」

「…………」

「ルーク?」



ルークは憤然と椅子から立ち上がるや否や扉を目指して一直線。

部屋を飛び出し(ガイを置き去りにして)どこかへ走り去ってしまった。



「……っラムダス!!」

「はい、なんでございましょう。ルーク坊ちゃま」

「坊ちゃまはやめろ」

「いいえ、坊ちゃまの実年齢が成人に達するまでルーク坊ちゃまはルーク坊ちゃまです」

「あぁいったい俺はあと何年……じぇねぇよ! これっ! これなんだよ!?」



ラムダスの目の前にビッと例の紙を突きつける。

顔から5cmという至近距離まで接近したその紙にまったく動じない泰然とした姿に追いついたガイは、

おぉ! さすがファブレ家執事! と思った。

近すぎて見えないだろうにラムダスは、はい。闘技大会のことでございますね、と至って普通に答える。



いや、うん。ラムダスって凄い。



その冷静な態度に反比例するかのようにルークは「はい、じゃねーよ!」と大層ご立腹のようだ。



「俺はこんな大会の主宰になった覚えも、っつーかこんな大会も知らねーぞ!どういうことだよ!」



紙を握り潰してわなわなと震えるルークに疑問を覚える。

こいつなら一番最初に食いついてきそうなことなのに、と。

どうやら本気で腹を立てているらしかった。



「ルーク坊ちゃま。これは公爵さまもお認めになられたことです」

「はぁ!? ……んだ、それ。じゃあ父上の名前で出せよ。こんなの、母上が知ったら……」

「あら、そのことなら知っていますよ」



おっとりとした声が聞こえ、ルークはギギギと音が鳴りそうな感じで振り向いた。



「母……上? と、闘技大会ですよ?」



シュザンヌは少し目を伏せたがすぐにふわりと微笑んでみせる。

シュザンヌの後ろにはアッシュもいた。

が、彼はじっと見つめるだけで何も行動に起こさない。

ガイは二人に挨拶をするべきか悩んだ、が雰囲気的にできそうにはなく、様子をみるしかなかった。



「本当はあまり危ないことはして欲しくはないのですけれど……。

いいのです。今回、私は何もいいません」







ぽかーん。







口をぱかりと開けたまま立ちすくむ姿にシュザンヌはくすくすと上品に笑う。

あらあら。驚かせてしまったかしら? という言葉にもすぐに反応できない。

立ち竦んだルークの硬直をといたのは……。





「あきらめろ」





あまりにも簡潔なアッシュの一言だった。



「あ、あきらめろって……。アッシュ? 公務は…仕事はどうすんだよ」

「さぁ、な。なんとかなるだろ」

「さぁなって……かるっ! アッシュ軽っ!!」

「……俺が軽いような言い方をするな」



憮然とするアッシュと騒いでいるルークの対比が面白い。

どうやらアッシュも一枚噛んでいるらしい。

ラムダスを見て、シュザンヌを見て、アッシュを見る。何かピンとくるものがあった。

「あぁ……そういうこと」

「どういうことだよ!」



うがっと突っかかってくるルークをまぁまぁと抑えながら、

あぁ騒がしくなるだろうなぁ……とどこか他人事のように感じるガイだった。





















そして当日。



『さぁさぁさぁやってきました! まさかのファブレ公爵家公認闘技大会!

主宰は、かつて毛の逆立った猫のようだった公爵家子息、

今はすっかりお兄ちゃんっこのルーク・フォン・ファブレーーーっ!』



「誰がお兄ちゃんっこだ!」





相変わらず独特の紹介をする司会者に突っ込む。





『そんなこんなで選手紹介! まずはルーク・フォン・ファブレ率いる幼馴染チーム!

昔の傲慢さがうその様!

素直で純粋お兄ちゃんっこ、走り出したらとまらない!! ルーク・フォン・ファブレ!

弟に慕われて満更でもない!?

愛情裏返って呼び方は「屑!」そんなんじゃ愛は伝わらないぞ! アッシュ・フォン・ファブレ!

使用人はマルクト貴族?

びっくり仰天な正体を隠し続けた女性恐怖症、ガイラルディア・ガラン・ガルディオス!

なぜ王女がここにいる? 興味があればどこまでも!

弓術回復なんでもござれ、ナタリア・ルツ・キムラスカ・ランバルディア!』





わぁぁ……と盛り上がる観客と逆に幼馴染チームはとんでも紹介に戦う前からステータス異常一歩手前だった。





「なぁ、アッシュ。なんであいつ不敬罪で捕まらないんだ……?」

「……」

「は…はは……」

「そうですわね、私はサポート術も心得てますのに」



いや、そういうことじゃなくて。

三人の心に異口同音の言葉が浮かぶ。





『さぁ、続いて対戦相手の紹介だ! 世界を超えてやってきた時空剣士チーム!

人間の母と天使の父を持ち、ドワーフに育てられた種族的にグローバルな剣士!

剣は2本で2倍の強さ!! ロイド・アーヴィング!

神の子と書いて神子!

そのドジっぷりはいつでもどこでも発揮されるから油断できないぞ! コレット・ブルーネル!

脅威の4028歳!

果たしてロイド以外に心動かされることはあるのか? 天使で父親、クラトス・アウリオン!

世界中の女の子はすべてハニーの極上ナンパ師、でも男でハニーはロイドだけ!

絆された男、ゼロス・ワイルダー!』



またもや会場は割れんばかりの歓声に包まれる。





「ぐろーばるってなんだ?」

「ここ、どこだろね〜」

「……」

「俺さまの紹介一言余計じゃねーの?」



両チームの紹介が終わり司会者がスゥっと息を吸う。



「レディーゴー!!」



















闘技場大盛り上がり。





2009、9・3 UP