うっかり過去に 2
ガイの背中にしがみついて、ひっくひっく、と泣くルークの姿は女性陣にとって酷く庇護欲をかきたてるものであるらしく、口々に慰めにかかった。
「ル、ルーク…どうしたの?」
「そんなにお泣きになって……。大佐に何か言われまして?」
「ルーク様ぁ〜そんなに泣かないで下さいよぅ」
アニスの手がルークの頭を撫で撫でする。
この「ルーク」はどこからきたのか、いやそもそも「ルーク」なのか、は涙によってぶっ飛んだようだ。
「……ぅぅ〜」
上目遣いに女性陣ノックアウト。
ルークを元気付けるべく更に近付こうとしたのだが。
ずざざざざっ
「「「………」」」
「す、すまない。あはははは…」
器用にも背中にルークを張り付けたまま猛スピードで後退する姿は一種異様なもの。
「ガイ…私達はルークに近付きたいのです。どうしても嫌だと言うのなら離れて下さいませ」
「ナ、ナタリア…君はまた無茶なことを……」
ぎゅーっとしがみついて離れない。
離そうとすると背中に顔を押し付けてイヤイヤ。
じりじりとにじり寄ってくる女性陣に内心悲鳴をあげながら。
「じゃ、そういうことで!」
逃げた。
そういうことって何なんですの!と言う声が聞こえたがガイの足は止まらなかった。
ルークを休ませている部屋に賭けこんで、一息。
(どうしても近づかれちまうとなぁ…)
そこではたと気がついた。
ルークが背中にひっつけたままだと。
「ル、ルーク?」
「……」
ガイの爆走にしがみ付いている間に涙は収まったようだが、以前としてぺったり張り付いている。
「黙ってちゃ分からないだろ?」
ガイは後ろに手を回してあやすようにポンポン叩いた。
「…俺、おれ。帰れないかもしれない。どうしよう…ガイ……」
「帰るってどこに?」
「未来に」
へー、未来。そっかぁ未来かー。そりゃ帰るの難し…
「ってちょっと待て!」
ぐるんと体を回転してとんでも発言をしてくれたルークの肩をガシリ。
「みみみみ未来っ!?」
ぱちぱちと濡れた瞳を瞬いて、うん、と言うもう一人のご主人様兼親友兼弟分と言うか育て子にガイは目が回るのを感じたのだった。
2007、8・7 UP