「なぁクラトス」
「なんだ」
「俺達どういう関係なんだろな」
クラトスは首を傾げた。いまさら何をという思いが巡る。
血の繋がりがあることは随分前に露呈してしまったし、ロイドも混乱と躊躇いの末に、その事実を認めていると感じていたが。
「あ、違う違う。あんたが父さんってのがどうこうじゃなくて」
「ではどういうことだ?」
するとロイドはうーんと唸ってしまった。
「だから、それがわからないんだって……。えーと、今の状態……違うな、やっぱ関係?」
ああでもないこうでもないと思案するロイドを見てなんとなく、なんとなくだがわかった。
「答えではないが、お前が何を言いたいかは分かった。私達を的確に表現する言葉がない、そういうことだな」
「そう! それ! よくわかったなークラトス」
「ふむ……。そう、だな。言われてみればその通り私達を的確に表す言葉はない……」
「だよなー。でもなんかある気がするんだよ」
自分達の関係は単純なようで、そうではないのだ。
客観的に一言で表すなら「父と子」だ。
それは間違っていないし、否定することなどあり得ない。
だが。
考え込むロイドの顎に手をかけて口付けた。
「単なる父と子なら、こういうことはしない。幼い頃なら別だが」
不意打ちだったためか仄かに赤くなったロイドが頷いた。
「俺、親父とこんなことしたことないしな」
「それはそうだろう。ダイク殿とお前の方がよほど親子として、一般的だ」
「ドワーフと人間だけどなー」
そこは一般的ではないが、2人のやりとりは親子そのものだと側で見ていると分かる。
自分とロイドはどうか。
親子の範囲から逸脱している自覚はある。
だが、だからといって――口付けをする、それ以上でもない。
「よくわかんねぇよな」
「わからんな」
「俺よりうんと長く生きてるあんたがわかんないんだから、俺がわからないのも当然かー……」
妙に納得してロイドは頷いた。
「お互いを大切に思い、掛け替えのない存在と思っている関係。まぁ、長いが、表現するならこういうことになるだろうな」
「そう、だな。そうなんだろうな…。うん……」
デリス・カーラーンへ旅立つまでという制限付きで、今は2人で旅をしている。
クラトスはロイドと離れたくはないと思っているが縛るつもりはない。
ロイドもまた離れたくはないと思いつつ、なすべき責任と戦っている。
どちらを選択しても、辛い。
曖昧な二人の関係を持て余しているのも事実だ。
だからといって隠したい訳でもないから、二人はこのような会話をしている。
クラトスは考えた。
もし、ロイドに特別な存在、それこそ一生をともに共にしたい人物ができたとしたら、自分はどうするのだろうか、と。
親として恐らく心から祝福するだろう。
だが、何か違う感情も抱いてしまうのだろうとも思っている。
そのあたりが親から逸脱している。
ロイドは考えた。
クラトスはこれから先、多分、特別な人はつくらないのだろうと。
クラトスの中で、母と自分は例外だろうが、そういう部分は恐ろしく欠落しているように見える。
だから、もし自分が離れたいといえば「そうか」と言って離れるのだろう。
本当は何かを感じていたとしても、クラトスとはそういう人だ。
そもそも、ロイドにしてもクラトス以上に一緒にいたい人など少なくとも今はいないのだ。
「考えるだけ無駄な気がしてきた」
「ああ」
ロイドは少し頭を書いて、行こうと促し、クラトスの頷いた。
いずれ落ち着く答えがでるかどうかは分からなかったが、今はこれでいいとロイドは思ったのだった。
なんだかよく分からない関係性の話が書きたかった!(きっぱり)
2012、6・24 UP