「会いたい、なぁ…」
ぽふりと俯せになって、思う。
この2日、同じ家にいるというのにアッシュに会っていない。
「会いたい……」
会えないのは忙しいから。それはお互いのこと。
どんなに忙しくてもいつもは食事の時に会えるのに今回は違った。
昨日はアッシュ、そして今日はルークの時間が合わなかったのだ。
頑張って終わらそうとしたけれど…量が半端ではなかった。
「あー……」
寂しい。
逢いたい。
声が、聞きたい。
会いに行こうかな?
あ、でも疲れてるかもしれないし、寝てるかもしれない。
でも。でも。
「…っ」
会いたくて会いたくて堪らない。
たった2日なのに。
ぎゅってして名前を呼んで。
目がなんだか熱くなってきて慌てて体を丸めてやり過ごす。
自分で自分を抱きこんでこんなことで泣くな、と自分に言い聞かすけど。
「も…ダメ……っ、ふぇ…」
最初は一粒。
それを追うように次から次へと溢れ出てくる。
逢いたい気持ちが涙で溢れる。
「なんでとまんないんだよぉ…」
きぃん きぃん…
「…あ……っ」
『―…ルーク』
「あ…しゅ…!」
なんで、どうして。
『泣いてるような気がしたからな。…どうした』
「な、んでもない。泣いてなんか、ない、よ」
『………』
「ほんとだって…」
「ね、アッシュ…」
「…あした、会える?」
「会えるに決まってるだろうが」
後ろから聞こえるはずのない声。バッと振り返って、そしてぺたんと座りこんでしまう。
「アッシュ…?なんで……」
「泣いてると思ったから」
「それ…さっきも聞いた」
ゆっくりと近づいてルークの頬にふれる。
「やっぱり泣いてんじゃねぇか…」
優しく撫でてくれる手にふにゃりと微笑んで。
「アッシュだ…」
「あぁ、俺だ」
背中に回される腕の中に飛び込んで、顔を埋める。
「アッシュ…あっしゅ……ひっく…ぅう〜」
涙がぼろぼろ零れて上手く言葉にならない。
逢いたかった。ぎゅってして欲しかった。
来てくれたことが嬉しくて言葉にしたいのに。
『あぁ、分かってる』
あ。
頭の中に響く声。
まだ、回線繋がってたんだ…。
それが伝わったのかアッシュから微かに笑った気配を感じた。
『切るか?』
確信犯な問い。
「…ぃやっ、きらな…で…っ!」
頭の中の声に、答えると独り言みたいだなぁと思うけど、そんなこと今はどうでもいい。
もうちょっと繋がっていたいから。
「…寂しかったか」
…感情が筒抜けになってしまうのは困るけど。
「うん。…たった2日なのにおかしいよ、な」
「いや」
髪を撫でていた手の平が、背中をぽん、ぽん、と一定のリズムで叩きだす。
「今日も忙しかったんだろう。…もう寝ろ」
「でも…もうちょっと……シュと…一緒に、い…たぃ…」
すー……すー……
腕の中で眠る半身をゆっくりと横たわらせそのサラリとした髪に指を通して呟く。
「ここに、いてやる」
それが聞こえたのかどうか定かではないが、夢の中の朱はにこりと笑った。
あ、甘い、ね?いつも一緒にいたいルーク。おこちゃまですから。
選択課題・恋する台詞「…あした、会える?」 お題サイト…リライトさま
2006、7・8 UP