brightly shines ―3―















近いうちに何かありそうだ。

根拠はない。ただの勘。

しかしいい意味でも悪い意味でも自分の勘はよくあたるのだ。



「ユーリ、ちょっといいかい?」



右を見るとフレンがいて少し驚く。唐突に現われんな。

俺が驚いたことにフレンは驚いたようだったが、それがちょっと気恥ずかしくて合わせた視線を外して再びルークへと向ける。

こんな感情もバレてるだろうけれどそんなことはこの際無視だ。



「こんな所で君に会うとは思わなかったよ、ユーリ。……久しぶり」

「俺だって驚いたぜ、フレン。元気そうだな」

「まったく君は……」





1年と少し、会っていなかっただろうか?

「ちょっと旅してくるわ」とメモを残してバチカルの下町を出てきてこんな所で会う。



まったく、幼馴染ってのは行動パターンまで似ているのだろうか?





「悪かったって」

「連絡の1つくらいくれたっていいだろう?」





……少し恨めしそうな感じで言うな。





「あー……ガイに会ったからそのうち連絡行くかなって思って、さ」

「さっき聞いたけれど、ガイと会ったのはつい最近だろう? それまでに……」

「あー、わかった、わかったから。それより本気似てるんだなお前ら」



フレンはあからさまに話を摩り替えられたことに少し眉を顰めたが、1つ溜息を零してうるさく言うのを止めた。

心配かけたのは悪いけど、放っておけば朝までグチグチ言われそうだからな。



「お前は双子だって知ってたけどあそこまで似てるとは思わなかったぜ」

「僕ら自身はそこまで似ていると思わないけど」

「……。お前、相変わらずだな」



やっぱどっか抜けたままだ。

多少の差異はあるがガイとフレンはやはり双子らしくそっくりなのに。



視線の先には剣の手入れをしようと危なっかしい手つきで剣を持つルークと、それをハラハラしつつ見ているガイがいる。

……まぁ、あんないかにも手を切りそうな手入れじゃ生きた心地しねぇだろうな。

そればっかりは経験がものを言うので手馴れていない間は仕方ないが。





「……心配性は2人とも同じ、か」





ぽろりと口から滑り落ちた言葉に、じゃあ心配させないようにしてくれ、と横槍を入れられる。

マジでこいつ変わってねぇ。というかむしろ……。



白光騎士団に入って……3年か? ますます頑固に磨きがかかったな……。



この1年で少しは変わっているかと期待した俺がバカだった。

いや真面目じゃないフレンなんてまるで想像できないが柔軟になったっていいのに。





「ユーリはルーク様といつ会ったんだい?」

「んあ? あぁ、砂漠のオアシスでだ。今にもぶっ倒れそうなお坊ちゃんがフラフラしてたんでね」





今思えばなんで声を掛けたのだろうと思う。

見たからにいい服を着ていて、できれば関わりたくない部類の人間だとわかっていたのに。

……まぁ、そんなことなしにしても何か放っておけない感じがしたのだが。





「ユーリは相変わらずだね」

「はぁ?」

「ルーク様が心配だったんだろう? ユーリは困っている人を放っておけないから」

「それはお前だろ」





ルークの旅の一行と顔を会わせたらフレンと殆ど同じ顔があって、かなり驚いた。

フレンには双子の兄がいてその兄は白光騎士ではなくファブレ家子息の付き人兼護衛剣士をしていると話には聞いていたが、まさか旅の途中で出くわすとは露にも思っていなかったのだから。



こちらがガイを知っているようにあちらも自分のことを多少知っていた。

だからこんなにすんなりと旅に同行できたというのもある。





まぁ1番の理由は……。







「ユーリ! フレン!」





親善大使であるこの坊ちゃんがなぜか俺に懐いたから、だろう。

剣の手入れが終わったのか飽きたのか、鞘に収めてこちらへ歩いてくる。



「フレンとユーリって知り合いだったのか?」

「知り合いというかなんつーか」

「幼馴染……でしょうか」



そう言うとルークは「ふーん」と意外そうにしながらちょっと不満げにフレンを見た。

あまりにじとっとした目線で見ているから何かと思う。





「フレンが騎士になってからはあんまり会ってなかったけどな」





まぁ、俺が行方をくらましてたからってのも理由だがそれは言わずにおく。

それにまた「ふーん」と言っているがやっぱり何か言いたげだ。

そんなルークの肩に腕を回してガイが揶揄するように笑う。



「うちの坊ちゃんは仲間はずれにされてご機嫌斜めなようだな?」

「ばっ……そんなんじゃねー」



ふいっとそっぽを向いたが図星なのか頬が赤く染まっていくのが見てとれ、若干子供っぽいやきもちに微笑ましさを感じる。

「ガイ、ここは外なんだから、そういうのはちょっと……」

「おっと、そうだったな。悪い」



ガイとフレンはよく意味のわからない会話をしてパッとルークから離れルークが「別にいーのに……」と口を尖らせている。

そしてあぁ、と納得する。ガイは対外的には付き人であり使用人ということになっているのだ。

だからあまりに砕けすぎた態度は好ましくない、と。





まったく、面倒くせぇな。





それが顔に出ていたのだろう。フレンが俺を見て苦笑していた。

















NEXT

まったく面倒なことになってきた。





2009、12・25 UP