a ray of hope ―6―















朝早くに目が覚めたナタリアは自室から外を眺めた。

昨日と同じ、朝。



でも。



昨日までとは違う、朝。







ひんやりとした窓に触れて、窓に映る自分を見て思う。

「あの2人が向かい合うのはこういう気分なのかしら……」





鏡のように?





ゆっくりと手を離す。窓に映る自分の手も離れる。



「……違いますわね…。あの2人は……」



鏡より複雑で。

なにより鏡に映り合う存在ではない。































「…あら、ガイ?」



城から出た3人が見たのはごく自然に立つガイの姿だった。



「まぁ、おはやいこと」

口に手を添えてナタリアが上品に驚きを表す。

「ガイ、おはよう〜!何?どしたの?」







「お嬢様方をお迎えに上がりました」





「…っぷ」

「ふふ…」



大仰な動作で一礼するガイに笑う。

何よりガイ自身が動作とは不釣合いな笑みを浮かべている。



「いや、なんだか早く目が覚めちまったんでね。皆を待ってたのさ」

「先に行っていても良かったのに」

「……少し確認をしたかった、からね」



ひた、とそれぞれの顔を見つめる。思いの他、真剣な表情に少し怯んでしまう。でも、誰も目を背けなかった。

背けることは出来ない。いや、してはいけない。







「分かっているんだな?」

彼は『アッシュ』だと。







「……ええ」

「分かっていますわ」

「…うん」



それぞれの返事を得て微笑む。3人が帰ってきた人物を『ルーク』だと思っていたなら今日アッシュと会わせる訳にはいかないと考えていた。

何より彼女達の為に…。まずは彼はアッシュだと受け止めなくてはならないから。



けれど彼女達は。

強く、聡い彼女達はちゃんと理解していたのだ。



「良かった。じゃ、行こうか。ジェイドは先に屋敷に行ったそうだ」

「えぇ!?大佐はっやーい!!」



とりとめの無い会話をしながら既に見えているファブレ邸へと向かう。

王城から近いこともありすぐに着き、門を守る白光騎士団に取次ぎを頼む。

取次ぎを待つ部屋で、ぽつりと。

「…やっぱり変な感じだ」

ふぅ、と溜息を一緒に言葉が落ちる。

「ガイ?」

「いや、取次ぎとかそういうのがどうしても慣れないんだよ。俺は長い間、ここに居たからね」

「あ〜そうかもね。使用人だったんだし。使用人の人達とギクシャクしちゃったり?」

アニスが興味津々とばかりに覗きこむ。

「いや、メイドと白光騎士団の皆には今まで通りで良いって言ったから大丈夫なんだけどね…」

「………?」

不思議そうに見てくるアニスに苦笑を返した時、扉が開いた。



「お待たせ致しました。ナタリア様、ガイラルディア様、ティア様、アニス様」

「アッシュと会う約束をしていたのですが…」

「伺っております。アッシュ様はカーティス大佐と応接室にいらっしゃいます。……ガイラルディア様、私ごときに敬語はお止め下さい」

「いえ……これは…癖のようなものですのでお気になさらず」

そういう訳には参りません、いえ俺もそういう訳には……。



ラムダスとガイのやり取りはこれで何回目なのだろうか。

「あー…あの苦笑いはこういうことかぁ…」

アニスが呆れ半分に零した。









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アッシュもルークも出てこなくても!アシュルクです!これからなりますから…!

遅々として進みませんが…仲間達の葛藤も当然あると思うのです。



2006、9・14 UP