ちょっと待て。今こいつは何と言った?
隣にいるガイも固まっている。
母上が少し間を開けてから静かに話しかけた。声が少し震えている、ような気がする。
「それは誰かに言われたのですか?」
するとルークはきょとんとしたように眼を瞬いて首を振った。
「じゃあ、なんで、お前は……」
「ルー、アッシュのレプリカ」
また言った。なんでルークは、それを知っているんだ!
まだ衝撃が抜けない俺は動けなかったが、ガイがしゃがんでルークと目線を合わせ話そうとすると、ルークは嬉しそうにしてガイの腕を掴む。
「ルーク様、どうしてルーク様はアッシュ様の、その、……レプリカ、だって知っているんですか?」
「なんで……?」
「はい」
ルークは少し考える素振りを見せて、それから覚えた言葉をなんとか使おうとしているようだったが、上手く言えないらしい。
それはそうだ。
まだ生まれて1年と少ししか経っていない。
急激に言葉を覚えだして、一人でも歩いたり走ったりできるようになったのは驚いた。
最近はそんな驚きが続いていたが、今日のは最大級だ。
「えーと……うんと、だって、レプリカだから?」
「……それじゃ分からない」
「アッシュ」
「いつから知ってた?」
「ずーっと」
……ずっと?
この家に連れて帰ってきた時、ルークは本当に生まれたてだった。
その時に両親に「ルークはレプリカだ」と確かに言ったが、その時のことを覚えていたのか?
いや、それはありえない。
ルークにその頃のことを聞いてみても首を傾げるばかりでまったく覚えていなかったはず……。
それだけ限定的に記憶しているはずは……ない……と思う。
考えているとルークは俺の手を握ってきた。
「ルーとアッシュ、いっしょ。ぜんぶ」
ぎゅっと握ってくる手が暖かい。
そんなことを思っていたら頭の中でキン、と高い音がした。
これ、は、どこかで覚えがあるよう、な……?
――さいしょから、わかってた
「ルーク? アッシュ?」
母上が驚いたようにこちらを見ている。
――あったときからずっと
言葉ではない、意識に触れる感覚。
……あぁ、コーラル城で最初に会った時にもこんなことがあった。
気のせい、じゃなかったんだな。
この繋がりでルークは、俺とルークが同じだと本能で分かったのか。
自分とルークの周りを取り囲んでいた虹色の光が消える。
「あれ?いまのなに」
ルークがびっくりした顔できょろきょろしてる。
「なにって……お前がしたんじゃないのか?」
「え、え? ないよ。アッシュが」
「俺じゃない」
「音素が取り囲んでいましたね。体はなんともありませんか?」
「はい、母上。どうやらルークと意識が繋がったようです」
ガイが、えぇっ? と声をあげて大慌てで口を閉じていた。