扉を開けて目に飛び込んできたものに、ぱかりと口を開けて一言。
「うわーなにそれ……ありえねぇ……」
「……第一声がそれか……いい度胸だ、屑が」
あまりにあまりな俺の感想に機嫌を損ねたといわんばかりに屑といってくる。
いつもならさらっと流すアッシュも、もしかしたら今の格好が気恥ずかしいのかもしれない。
アッシュは新しくしつらえた礼服に腕を通した所だ。
礼服姿は何度かみてきたが、これまでのとかかなり印象が異なる。
今までの礼服は黒や紺が主だったが、今回の服は上着が白に近い薄いベージュのためガラリと雰囲気が違った。
「かっこよすぎだろそれ……」
そうだ、ありえない。
そんなに格好よくなるなんて! いやいつも格好いいけど!
「アッシュの服っていつも黒っぽいモンばっかだったからさ、薄い色の服嫌いなのかと思ってた」
「別に……単に暗い色の方が落ち着くってだけだ。
今回は仕立て屋にどうしてもこの生地を使いたいって頼み込まれたからな……」
馴染みの仕立て屋の頼みとあれば無碍にする訳にもいかない。
「ふーん……そっか。うん、たまにはいいかもな!」
そう言ってはにかむからアッシュまで何やら居心地悪く感じる。
まぁ、似合わないから着替えろと言われる覚悟をしていたからまったく逆な反応に戸惑ってしまうのだ。
鏡を見て、我ながら見慣れない格好だと思う。
似合うか似合わないかではなく(いやそれすらよく分からないが)……落ち着かない。
本来、こういう色合いはルークが好んで身に纏っていることから自分に似合わないということはないのだろう。
ただ、ルークとは雰囲気が若干違うので違和感がある。
ルークが着ればしっくりくるだろうに、なぜ仕立て屋は今回この布地を俺にともってきたのだろうか。
……まぁ、ほんのり頬を染めてはにかんだルークの表情を見れたということでよしとするか。
驚いたけど、カッコいいよ、アッシュ!
2009、12・5 UP