「あ、アッシュだ」

「あーやっぱこの世界にもアイツいるんだな。ウゼー」



グラニデのルークとルミナシアのルークは高台の上からこの世界のルーク一行を見ていた。



「なんつーか、この世界の俺って……」

「ムカつく」

「ちょっ言葉選べよ! 違うだろ!」

「あー今のはアッシュに対してだっつーの。

……なんか、俺らと違うな。なんでアッシュにあそこまでビクビクしてんだ?」



ちなみにこの2人はすでにルミナシアの世界で打ち解け済みだ。

ニアタのオーパーツ的な存在と力によってグラニデルークはルミナシアに遊びに来ていたのだ。



実験室の前を2人で通りかかった時に運悪くハロルドの機械が独りでに暴走したようで

一番近くにいたルーク達が強制的に異世界に飛ばされたようだった。

それからしばらく、うろうろとしてみたら話しかけられるは話しかけられるはで2人は辟易していた。



グラニデルークが上手くごまかしていたが(ルミナシアルークは早々に面倒くさくなって投げ出した)いい加減痺れが切れた。

もういっそのこと、こちらの自分と合流しようという結論になったのだが、

世界中を文字通り飛び回っているらしい一行の足取りはなかなか掴めず、ニアミスを繰り返すこと数回、ようやく見つけた。





見つけた、のだが……。





「ここの俺とアッシュ、仲が悪いじゃすまないんじゃね?」



まったくルミナシアルークの言う通り、アッシュはルークを見るというより敵意丸出しで睨みつけて、何か怒っているし、

それに対してルークは反論しているのだろうが、端からみても萎縮しているのは明らかだ。





「俺たちもアッシュと仲が物凄くいいとは言いがたいけど、あれ見ると仲良い方に入るんじゃねぇかと思うな」

「同感」





揃って溜め息をついて、眺める。

2人して出ていくタイミングが掴めずにいたからだ。

「おい、いつ行くんだよ」

「んなもん俺に聞くなっつーの。………ん?」



見ればアッシュがルークの胸ぐらを掴み上げていてそれに2人はムカっとした。



「……今じゃね?」

「今だな」











「そこまでー」



そう言ってアッシュの手をルークから払ったのはグラニデルークだ。





「……えっ」





まったく自分と同じ者を見てルークは動揺しているようだった。



「まったくお前、俺のくせにアッシュにいいようにされ過ぎだっ」





そのまた後ろに髪は長いがまたもや自分がいた。







「なんだテメェらは! 隠されてでもいたレプリカか!?」

「あぁ? 何意味わかんねぇこと言ってんだ」



ルミナシアルークがいっそどこか楽しげにして

――それが不機嫌の裏返しと知っているのはこの場でグラニデルークだけだ――アッシュと対峙した。



次々矢継ぎ早に何やら言われているがどこ吹く風で右から左に流す。



「アッシュうるせぇ。少し黙れ」

「なにを……っ」

「黙れ」



強い視線と凄みを乗せた声で黙らせたことに満足したルミナシアルークは、

くるりと振り返りグラニデルークの肩にのし掛かるようにしてこの世界のルークを見た。



見た目はグラニデルークと同じ。だが決定的に目が違う。



「ルーク、おっもい!」

「んだよ、別にいいだろ、ルーク」

「よくねーよ!」



お互いをルークと呼びぎゃいぎゃい言い合ってる2人をあっけに取られ見ていた一行だったが

最初の動揺をすぐに消したジェイドが話しかけた。





「あなた方は何者ですか」



「ジェイド…?」



この世界のルークがびくっとしてジェイドを振り返る。



「普通に考えればレプリカだろうと思いますがその可能性は低そうですね。

……あなた方からは音素を感じない。私には第7音素の素養がないのでそれ以外の音素、になりますが。ティアはどうですか?」

「私も…感じません……」



それらの言葉に2人のルークは困ったように首を傾げた。

出てくる単語が分からないので理解しようもなかった。





「悪いけどまずレプリカってのがわからない。取り敢えず自己紹介しようぜ。ルーク」

「そーだなー」





「初めまして、ルーク。俺はグラニデっていう違う世界のお前だ」

「俺もー。ルミナシアっつう世界から来たぜー」





その後しばらく誰も何も言えなかった。



そんな馬鹿なと思いつつも、音素を持たないというそれが嘘だと言わせない説得力があるからだ。







「違う世界の……お、れ……?」

「違う世界でも俺は……! レプリカを作られてるっていうのか!」



ほぼ同時に前後から聞こえたそれの、アッシュの言葉が気になった。人に対して『作られる』という表現は正しいとはいえない。

レプリカ……偽物という意味だろうか。

ルミナシアルークが刺々しい声を出した。



「てめぇの言ってるレプリカってのが偽物って意味なら、答えはノーだ。

俺は生まれてから今まで『俺』であって他の誰でもない。

お前の偽物?そりゃ双子だしそっくりだけど、俺は俺でアッシュはアッシュだ。ありえねー」



「俺の場合どっちかって言うとアッシュが隠されてたんだけど……。

馬鹿馬鹿しいけど、俺に何かあった時のために育てられてたらしい。

俺に双子の兄弟がいるなんて最近まで知らなかったけど、俺とアッシュは違うよ」



2人のルークから明かされる彼らの世界でのアッシュとの関係は衝撃的すぎた。



「双子……!?」



ルークとアッシュが揃って驚いていることに対してグラニデルークとルミナシアルークは首を傾げた。



「え?お前らは双子じゃねーのか? そんなにそっくりなのに?」



グラニデルークが問うが、一同はなんとも言えない顔をして黙りこんでしまった。

そんな中ルークが口を開いた。





「えっと、俺、俺は……その、レプリカだからアッシュとは双子じゃない……。

あ、でも完全同位体だけど」





何を言ってるのかさっぱりわからない。





「はい! はーい! ちょっといいですかぁ?」

「んだよ、アニス」

「2人とも、何歳!?記憶喪失になったこととかは!?」



予想斜め上の質問だ。

グラニデルークとルミナシアルークは顔を見合わせてから不思議そうな声で記憶喪失になったこともないし、

17だけど、と告げた。

こう聞かれるからには、こちらのルークとは年齢が違うのかもしれないと頭を掠めた。



「お前は16とか?」

「んーいや……。まぁ17歳ってことにはなってっけど……。アッシュは正真正銘17歳なんだけど」



歯切れの悪いルークの言葉に、なぜ言い淀んでいるのか疑問に感じる。



「彼は生まれてから7年しか経っていませんから、正確な年齢は7歳ですね」

「は?」

「その冗談、ありえなさすぎて笑えねぇんだけど、ジェイド」



自分達の世界と同様、人をからかっているのだろうと呆れた視線を送った。

それにしてもジェイドらしくない(あくまで自分達の世界でのジェイド基準だけども)

真実味のない嘘だな、と思う。



「おやおや、信じていませんね?私は嘘など言っていませんよ。ねぇ、ルーク?」



それにこくりと頷いたルークを見て異世界のルーク達は更に混乱する。







「(おいルークっ! この世界どうなってんだ!?)」

「(わかるわけないだろ! 成長速度が違うのか……?)」

「(それはねーだろ)」







「俺自身生まれて7年しかたってないって知ったのは、最近のことだけどさ。

10歳より前の記憶がないのは記憶喪失だって言われてたし……」



この世界のルークの生い立ちはどうやら複雑なようだと感じたが未だ完全に理解することはできず、

ルミナシアルークは片手で自分の髪をガシガシとしながら、わっかんねぇと呟いた。



「とりあえず、俺とそっちのルークは自分の世界に帰れるまでお前らに着いていきてぇんだけど、いいよな?」



びっくりした顔のルークに、色々間違えられてうぜーから、とグラニデルークが付け加えると納得したようだった。



「えっと、俺はいいけど。皆は?」

「そうだな、何かに巻き込まれたらことだしなぁ」

「そうね……いいんじゃないかしら?」

「そうですわね」

「だって仕方ないしぃ〜」

「ま、基本アルビオールの中にいて頂くことになりますがね」





こうして一行にルークが2人増えたのだった。




















マイソロ3ネタ。マイソロ3が出てからどれだけの時間が経ってると思ってるのか……。
分かってても、書きたかったんですー。




2012、6・24 UP