執着している。
ふとそう気付いたのは唐突だった。ルークは、アッシュが好きなのだ。
……特別な意味で。ほら今だって。
そんな顔をするならナタリアと話していけなんて言わなければいいのに。バカだなルーク。
いや、そうする辺りがルークらしいといえばらしい。
「……バカね、本当に」
「ティア……?」
「ガイも気付いたんでしょう?」
あぁ、君は既に知っていたのか。それはそれで違う意味で複雑だ。上手くいかないもんだな。
「いつから?」
「ほんの少し前よ。第七音素の訓練の時、あんまり様子が変だったから聞き出したの。でもやめた方がよかったかもしれないわ。泣かせちゃったもの」
――ティア。やっぱり俺おかしい。こんなの変だ。レプリカだからこうなっちまうのかな……。
そういって涙交じりにぽつりぽつりと話し出してくれた内容に衝撃を受けたけれども、否定する気にはなれなかった。
ルーク自身が否定している。自分の想いを殺している。全てはこれ以上嫌われないために。
悲しかった。聞いてる方まで涙が出た。
(それに驚いたルークが泣き止んだのだから、それはそれで良かったのだけど)
ふとルークが振り向き俺と目が合ってギクっと体を強張らせていた。
あぁ、そうだよ。俺は勘付いちまったんだよ。
手招きすると諦めたように足取り重く近付いてきたので俯いた顔を上げさせた。
そんな恐る恐る見なくても怒る気はないよ。
「お前の、したいようにすればいい。けど後悔しないようにな」
とりあえずこれだけは言っとかなくちゃな。自分の気持ちは自分でどうにかしないといけないからな。
うん、と言ったきり動かないルークを不思議に思って見ると顔をゆがませていた。なんだよ泣くの我慢してる顔じゃないかそれ。
で、それアッシュに見られたくないから動けないのか。バッカだなぁ。
ふと遠くを見るつもりで視線を上げると今度はアッシュと視線があった。
ん? なんだ? こっち見てるなんて珍しいな。ん、口動かしてる。読唇術とかいう特殊技能は持ち合わせてないぞ。
なんだって? は? もう1回。
『 そ の バ カ な ん と か し て お け 』……?
いやいやルーク! ばればれだぞ本人に!!
というかアッシュお前自分でそうしろよ。
あ、嫌っつー顔しやがった。
あーどうしろって?
まぁあれだ。とりあえずルークは正面きってアッシュと話すべきだな。あの様子じゃ最悪のこと(斬って捨てるとか)にはならないだろう。
ちょっと時間がいるけど、仕方ないけどやってやるよ。
隣で同じように唇を読んだだろうティアが溜息をついていた。