とん、と目の前に置かれた皿。
「じゃーん! メレンゲ!!」
パッと見、生クリームに見えなくもないそれを見る。
何個も重なって繋がることなくゴロゴロと皿に入っているから生クリームでは有り得ない。
しかしいったいこれは。
「……何だ、これは」
「だーかーら! メ・レ・ン・ゲ!!」
ちょっと不満そうに言われた。
そうか、メレンゲか。
……メレンゲ?
「どこかで見たような気がしないでもないが。これは砂糖菓子、か?」
見た目はそんな感じだ。
記憶の中に引っかかるものがあるような、ないような。
そんなに甘いものに固執する質でもないのであまり覚えていない。
「あれ? 知らねぇ? コーヒーの横に置いてあったりするヤツだけど」
「あぁ……あれか」
コーヒーはそのままかミルクなので記憶からすっぽり抜け落ちていた。
言われてみればちょこんと控えめに置かれていたこともあったかもしれない。
それがなぜ単体で、しかもこんなに大量にあるのだろう。
「これいつも甘くてうまいと思ってたんだよな〜。だから作ってみた!」
「食ってたのかよ……」
目の前でルークがぱくりと口に放り込んで口をもごもごさせている。
「結構カンタンに作れんだぜ? 材料がさ、砂糖と卵白だけだし」
いやだからといって自分で作らなくてもいいだろう、と思うが口にはしない。
予想外の行動をするのがこいつなのだから、と。
ルークの手が伸びてきて、メレンゲを1つ口に入れられた。
見た目と裏腹にさくさくしているのだと初めて知る。
それにしても……甘い。というか甘い以外の要素がねぇ……。
「どうだ〜?」
ぱくぱくと何個も己の口に運びながら問うてくる。
これはそんなに連続で食えるもんなのか。
「甘い」
「あははっ、まぁ、アッシュはそう言うかなとは思ってたけど」
「少し砂糖入れすぎじゃねぇか?」
「ええ? いやこんなもんだって」
俺はこの甘いのが好きなんだけどなぁ、と首を傾げる。
「……コーヒーか何かねぇのか」
甘いメレンゲは口の中から消えているが、どうにも甘い。
どうしようもなく苦いものが欲しくなった。
「あーじゃあ持ってくるよ。ちょっと待ってろよ」
いや別に取ってこいと言ってるわけじゃ、と思ったが遅かった。
あいつはなんでこんなに落ち着きがないんだ。
手持ち無沙汰だったので、目の前に置かれた皿に手を伸ばす。
あれだけ甘さに辟易したというにも関わらず再び1つ摘む。
ほろりと溶けるそれは、やっぱり甘かった。
ルークは次の日左腕が痛くなる(メレンゲ混ぜすぎて)
2009、5・27 UP