「あれ? ゼロス? どしたの、こんなところで」
夜風にあたろうと出てきたコレットが見たのは、宿の外階段に座るゼロスだった。
いつものピンク色の上着は着ておらず、黒のタンクトップとズボンという姿。
「んー。少し眠る気分じゃないだけ〜」
コレットにちらっと笑って見せる。
そんなに今夜は寒くないものの、それでも少し肌寒い。
コレットは自分が羽織っていた薄手のタオルケットをゼロスの肩に着せ掛けた。
ふわりと降ってきたタオルケットにはコレットの暖かさが移ってほのかに暖かい。
「ありがと〜コレットちゃん。でもこれじゃコレットちゃんが寒いんじゃない?」
そういって返そうとしたがコレットはふるりと頭をふる。
「平気だよ。私は長袖だもの」
「いやいや、女の子の方が冷えるじゃないのよ。ん〜…じゃあ一緒に使うかー」
コレットを引き寄せ、隣に座らせて一緒に包まる。
ゼロスとしてはタオルケットを譲りたかったのだが、コレットはそれをよしとしないことが分かっていたから。
コレットはふわふわした見た目と裏腹に意外と自分の意見を曲げないと知っている。
分かるほど、同じ時間を共有している。同じ接点を通して。
二人でぬくぬくと暖をとっているとコレットがふいに笑った。
「ふふっ、こうやってると、なんだか兄妹みたいだね〜」
「コレットちゃんが妹だったら、俺さま、超大事にするぜ〜!
俺さまの眼鏡にかなったヤツじゃないとお付き合いは許しません!」
「あはは」
「守って守って……旅になんて出さねぇな」
「……ゼロス」
神子として生まれたものの勤め。あぁ。なんてくだらない。
衰退世界の神子は世界再生のための死を。
繁栄世界の神子は血族存続のため婚姻を。
本人の意思なんて関係なくそれは生まれたときから決定していること。
この立場をセレスに譲ることが最善だと思ってきたが、それは間違いだったと最近気がついた。
がんじがらめのこの立場を、好きでもないやつと結婚させられるかもしれない神子を、譲るのが本当にいいことなのか?
考えを改める機会があるとは思わなかった。
「ねぇゼロス」
「ん?」
「私たち……似てないけど、似てる、よね」
外見じゃない。
「そう、だな。自分がいいと思うほうに突っ走るところとかは似てるかもしれねぇな〜」
「ね」
自分と似てるあなた。
同じ人に惹かれる君。
……あぁ、笑えるくらい本質的に似ているんだろうな。
二人ともロイドが好き。
2009、5・3 UP