「あ……」





横たえると不安そうな素振りを見せる。

もの慣れないその姿に酷く高まってしまう。



意味もなく宙を泳いだ手を掴むとびくり、と体が揺れた。

ゆらゆら揺れる瞳に吸い込まれるようにして唇を重ねると一瞬の緊張。





「ん………っ」





ぎゅっと閉ざされた目。



不安だろうに、それでも受け入れようとする姿はとても健気で。

だが、まだ、だ。その時ではない。



少しでも安心するように、と体全体で抱き締めそのままごろりと横に転がる。





「……アッシュ?」

「お前、まだ怖いんだろう?」

「そ……っ」

「んなことねぇとか分かりきったことは言うなよ」

「……っ」



目元を赤く染めて視線を下げたその様にすらそそられる。

しかし自分の思いだけで進めてはいけないことだと分かっている。







「今日はもう何もしねぇ。……だから、そんなにガチガチにならなくていい」





宥めるように額、瞼、頬にキスを降らす。



優しく触れることで少し和らいだ瞳が俺を見る。



「アッシュ……あの、な……」

「なんだ」



「……その、俺……。あ、アッシュが怖いとかそんなんじゃねぇんだ……」

「知ってる」



「うん…」





知らないことは何だって怖く感じるものだ。こういう事柄ならなおさら。





「でも……でも、な…」



躊躇うように伏せていた目を上げる。



「怖いけど……分かんねぇけど。でも、もっと……アッシュに近付きたい……」



思いつめたような表情をして。

自分でも上手く気持ちの整理ができないようだった。





「……ルーク」

「アッシュ…」



「……無理はさせたくねぇ」

「うん……でもっ俺…っ」



体を小刻みに震わせてそれでも言い募ろうとする唇を己のそれで塞ぐ。







「焦るな、ルーク。……大丈夫だから」







優しく啄むように唇を食む。何も焦ることなどないのだと教えるように。

柔らかな髪をゆっくりと撫でると己の中の衝動もさらりと溶けていくように感じる。



ルークの頬に触れ、髪に触れ、背中に触れ。



優しい触れあいに安心したのだろう。

ルークの目がとろりとしてきて、それに比例して腕にかかる重みも増してきたようだ。

更に引き寄せて緩く腕を回し、ぽんぽんと一定のリズムであやす。



本格的に眠くなったのだろうルークは、もぞもぞと動いて収まりのいい場所を探してから満足そうに息を吐いた。

寝る寸前といった風情のルークは胸に頬をすり、と寄せて何かを呟いているようだ。





(なんだ……?)





少し顔を近づけてみる。



「あ……しゅ、…すき……」

「……!」



そう言ってルークは完全に寝入ってしまう。

折角鎮めた色々なものがぐるぐると己の内を巡りだして柄にもなく少し焦る。



(治まれ、治まりやがれこの野郎……)



自分を抑えるためにグッとルークを強く抱きしめ、柔らかい髪に顔を埋める。

すぅすぅと規則正しい寝息と心音に波立った心も落ち着きを取り戻してくるようだった。





少し離してルークの顔を見る。

いっそあどけないとも言える安心しきった表情で自分に縋って寝るルーク。

……こちらは様々な衝動に襲われているというのに、暢気なものだ。







(あぁ、俺はどこまでこいつに合わせることができるんだろうか)







まぁ、なるようになるだろう。

考えることを放棄して俺も眠ることにした。

















だって7才だし。





2009、5・7 UP