ちゅ。
日記を書くルークの後ろから近付いて頬に一つ。
「っ!アッシュ!風呂、出たのか〜」
少し驚いて突然触れてきたアッシュを見上げる。頬がうっすら赤いのはアッシュの前に入浴したから、ではなく。
「ちょっと待ってて。すぐ書いちまうから…」
「あぁ」
「…………」
「…………」
「って、アッシュっ!!」
「何だ」
「何って…ちょ……」
待ってて、と言ったのにアッシュはルークに触れる。
首筋に。
髪に。
顔に。
キスを降らす。
「書けね…から、や、め………」
抵抗しつつもイヤな訳じゃない。むしろ。
「やめていいのか?」
座るルークの頤を掴んで視線を合わせ上から覗き込む。中途半端に触れられて堪らなくなってきた様子がつぶさに分かって、面白いことこの上ない。
「…ずりぃ」
「なんとでも」
こういう時のアッシュは何を言っても暖簾に腕押し状態。
しょうがないなぁと思う。でもやっぱり大好きだから単純に触れ合えて嬉しい気持ちの方が大きいのは仕方のないことだ。
「ちゃんと、キス、して」
戯れみたいなキスも好きだけど、やっぱり唇は特別。
小さく笑いながら口付けられてなんとも言えない気持ちが広がる。
ただ触れているだけであるのに気持ちだけじゃなく体の隅々まで何かが伝っていくような。
「アッシュ…」
「なんだ」
「あ……」
いつのまにかルークは体を捻って腕を回し、アッシュに抱き付いていた。
そうしたらこの気持ちが分かるような気がするような気がしたからだ。
髪を撫でてくる手が気持ちいい。でももっと。
椅子から立ち上がってアッシュにしがみつく。全身でアッシュが感じられてなんだかたまらない。
「…どうした?」
ぎゅ、と縋り付くようにされて流石に気になったのかアッシュは怪訝そうに、しかしどこか楽しそうにも聞こえる声色で尋ねた。
「ん…なんだか…くっつきたくて…なんでかわかんねぇけど……」
肩に顔を埋めながら言うルークにクッと笑う。笑わずにいられるかこれが?
「分からない、か。……ガキ」
「…んだよ」
「いいや?」
至近距離で耳に吹きこむように囁いてやる。
「もう少し待ってやる」
俺の我慢が続けば、な。
「…?」
何を待つのかよく理解はできないけれどなんだか優しいから、まぁいっか、とルークは思う。
結局その日の日記は進まなかったが思う存分構って貰えて嬉しかった、と明日の日記に書くことになるだろう。
なんでか分からないけどよりくっつきたい、近づきたい、と思うルークと、年齢を考慮して我慢するアッシュ。
あやうく裏になるところだった。
2007 9・27 UP