うっかり過去に 4
「目、覚まさないなー」
過去の自分はかれこれ丸1日眠っていることになる。
「打ち所が悪かったのか?」
ちょっと本気で心配になってきた。
「んーと……確かこのへん……」
落ちてきた時、頭に肘が当たってしまった記憶があったからその辺りを撫でてみる。
少し腫れているようだったけど、大したことない。
んー? じゃなんで目覚まさないんだ?
そう首を捻っていたとき、ふと髪が目に入った。まだ長い髪。
それが苦い記憶をちりりと刺激してくるのを首を振って追い出した。
「話しかけても?」
「うおぁっ!? なんっだよジェイド普通に現れろよ! 気配消すなっ」
ジェイドはにこやかさはそのままに、おや、と小首を傾げた。
……やめろ、気持ちワルイ。
「貴方は気配をわざと絶っているか否か判断できるのですね。興味深い」
「深くねーよ……。んだよ、なんか言いに来たんだろ」
「貴方に指摘されるとは……ま、いいでしょう。少し付き合って頂きたいことがあるのですよ」
ジェイドが言うにはこうだ。
こちらのルークが誰かさんのせいで(言っておくが俺だって好きで落ちてきたんじゃねぇからな!)目覚めないので動きようがない。
仕方ないので今から向かうザオ遺跡についての情報をここケセドニアで聞き取り調査をした所、
どうやら入り口付近に狂暴な魔物が住み着いているらしいことが分かった。
「で、情けないことに駐屯している兵では手に負えないと泣き付かれまして。
どの道我々はザオ遺跡に用事があるのですからそれならば先に叩いておこうかと」
「ふーん。で、それに俺も行けばいい訳だな? 分かった。すぐ出るのか?」
ん? 反応がない。
なんだよ、なんか変なこと言ったか俺?
「……失礼。聞き分けのいい貴方というのは想像だにしていませんでしたので」
「あーそうかよ……」
なぜだかこっちがガックリするからやめてくれ。
「この奥か?」
「の、ようですね」
確かに何かいる――。
もう少し奥に。
「進むか。ティアはここで誰も入ってこないよう見張っててくれ」
「え……」
ティアが困惑したように俺を見る。
「おいおい、それじゃ回復できなくなるぞ」
それに左手をぷらぷらさせて答えた。
「だーいじょうぶだって。アイテムもあるし。とっとと行くぞー」
少し進んでジェイドが静かに聞いてきた。
「どういうつもりですか?」
「お前らに戦わせるつもりはないってこと」
「は!?」
それ以上は面倒だったので、というかもうすぐそこに魔物がいる気配がしたから駆け出した。
サンドワームに似ているけど、サンドワームよりも体が岩のように見える。
「相手してやるよ!」
そのまま突っ込むと後ろから「無茶だ!」と聞こえたからちらっと見ると構えてはいるが固まっている2人が見えた。
正解だ。まだあの2人ではこいつと戦えない。
俺一人で十分。というか俺の相手にこいつは役不足だ。
図体だけはやたらでかいから狙う所はどこにだってあった。
さほど時間もかからず、沈めて2人の元へ行くと。不思議なことに2人は多少の怪我をしていた。
「なんでケガしてんだ?」
「雑魚魔物に不意討ちされちまってさ、かすり傷だよ。ティアにファーストエイドしてもらうさ」
「いや、今治しとこーぜ。俺が円書いたらその中入れよ。ジェイドも」
くるっとその場で回り中心に剣を突き立てる。守護方陣だ。
あんまり大幅な回復効果はない奥義だけど、この時の2人の体力はもともと高くないはずだからおそらく全回復に近くなったはずだ。
2人は、というかガイがまじまじと俺を見てきた。
「ほんとに、ルーク、だよな……?」
いまさら何を、と笑おうとしたけど、そこで俺の意識は暗転した。
「んー……?」
「お、気付いたか。おかえりルーク」
ガイが苦笑しながら覗きこんでる。
「お前何も帰ってくるときまで空から落ちてくることないのに。しかもアッシュに直撃とか……」
どうやら隣のベッドにはアッシュが寝ているらしかった。
悪いことしたなぁと思いつつ、それよりなにより帰ってきたことにほっとした。
……アッシュに盛大に怒られたのは、次の日の話。
うっかり過去に、これでエンドですー。
リクエストありがとうございましたっ!
盛大に怒られた話は、書いたほうが楽しいかなー。そのうち書くかも(書かないかも)
2011、9・27 UP