「あら青年。珍しいとこで会ったわね」
「おっさんこそ。転げ落ちても知らねぇぞ」
レイヴンは屋根の上で面白そうにくつくつと笑った。
内心、その言葉そのまま返す、だ。
ユーリは屋根から飛び移るしか手段がないような高さである木の、さらに上にある太い枝にまるで寛ぐように身を預けている。
「気持ちよさそうね。おっさんもそっち行っていい?」
「これんのかよ?」
「弓はバランスが良くないと狙ったものに当てられないのよ?
俺はジャンプしながらでも当てられるほどバランス感覚、いいの!」
そう言いながらレイヴンはひょいと枝に飛び移った。
そしてユーリのいる枝に手を掛けほぼ腕の力だけで体を引き上げる。
「レイヴンって、実は腕力あるよな」
「え、なに、は!? ユーリ、落とす気?」
ユーリはレイヴンの腕をガシっと掴んで呟く。
登ったところでいきなり腕を引っ張られたレイヴンは少し体勢を崩したものの、危なげなく座った。
しげしげとレイヴンの腕を検分するユーリを見るともなしに見る。
いつも思うが本当に整った顔をしている。
フレンとユーリは幼いころ良く一緒にいたのだという。
フレンもまた、整った容姿の持ち主なのでさぞ、目立った子供2人組だったことだろう。
そんなことを考えているうちにユーリは腕を離した。
「俺より純粋な腕力はありそうなんだよな。ムカつく」
「いやいや……。どう考えても攻撃力は青年のが上でしょ……アビシオン凶悪すぎじゃないの!」
「弓より剣の方が攻撃力があるだけだろ。あとアレは…敵倒した分だけ強くなるってのは、ある意味反則だろ。
まぁ、強いから使うけどさ」
同じ「倒した敵の数に応じて強くなる武器」であっても、完全に前衛であるユーリと、
場合に応じて中衛と後衛を臨機応変にこなすレイヴンでは、撃破率に違いが出る。
それが魔装具では如実にでるのだ。
「レイヴンって、器用なのか不器用なのか本当わかんねぇな」
「器用よ〜? 弓と小刀両方使うわよ?」
するとユーリは苦笑した。
前に乗り出していた体を木に深く預けて腕を組む。
「……まぁ確かに弓は使うは、小刀つかうは、それでさらに術まで使うんだから器用は器用なんだろうけど。
俺が言ってるのはそういうことじゃねーよ。剣で戦った方が、実は強いし、慣れてんだろ?
なのにわざわざそうしないのが、なんつーかな、不器用だよな」
レイヴンの筋肉の付き方は剣を使うそれがベースのように思われた。
それは一切剣を握ることをやめた訳ではないということだ。
仲間の見えない所で、剣の腕が鈍らないように鍛錬しているはず。
「剣はねぇ……性に合わないのよね」
「よく言うよ」
「信じない?」
「さぁ?」
そんな軽口を飽きることなく続けた。
何か目覚めるその前の。
2012、2・26 UP