夢を……夢を見ていました。
強い貴方の夢を、近い近い距離で見ています。
本当に強靭な精神と力でもって貴方は必死に生きています。
眩しいくらいに輝くあなた。
でも。
でも、貴方の強さは、放つ光が強すぎて自分自身をも傷つけようとしているのです。
なのに、貴方はそんなこと気づこうともしていない。
でも声を出すことも、貴方に触れることもできません。
あぁ、なんてもどかしいのでしょう。
伝えたい、伝えるべきことがあるのにそれをできるだけの術を持っていないのです。
ただ、すぐ側で、もどかしい思いに涙を溢れさせるだけです。
あぁ。
両手にあるものは強さだけが全てではないというのに。
どうか、誰か、あの人を止めて下さい。
優しすぎて身を滅ぼしかねないあの人を。
――。
「……ん」
ふわりと意識が浮上する。数回瞬きをして寝ていたのだ、とわかる。
途端に頭から何かが去って行く。
この感覚は知っている。今、たった今までみていた夢を忘れようとしているのだ。
なんとなく覚えていたい夢だったのに残念だ。
……もう、どんな夢だったか思い出せない。
思い出そうとするだけ無駄なことも、経験で知っている。
いずれ思い出すこともあるかもしれない。
夢を見た。
何かは分からないが、大切な夢を。
それだけは覚えておこう。