全部、失ったって、いい。
この存在があれば、俺は、それでいい。
おかしな話だ。
憎んでいたのというのに。
愛と憎しみは紙一重とはよく言ったものだ。
「…どうしたんだ?」
腕の中で心底不思議そうに尋ねられる。
それはそうだ。いきなりこの腕に捕らわれたのだから。
衝動的な行動。
しかし、これが俺の本心だと知っている。
普段抑えているだけ。
何かあれば俺はこいつ以外を選ぶことはない。
ルークの体に回した腕にさらに力をこめる。
痛いと感じる一歩手前まで。
「…んだよ、アッシュ」
しょうがない、とでも言いたげに背中をぽんぽんとあやしてくる。
ルークは俺のこの思いを知っている。
「俺はここにいるから」
何も言わずとも理解している。
俺の存在はお前なしに成立しない。
「俺だって、離れたくない。……絶対、離れねぇかんな」
お前も、俺なしに存在できないと、知っている。
もともと1つだった俺達は、いつも、いつも、半身を呼んでいる。
不自然な関係だろうが滑稽だろうが構うものか。
俺はお前がいれば、それでいい。
お互いが大切で、大切で。
2008、7・7 UP