a ray of hope ―2―















「あ……?」




上半身を起こして周囲を見る。














「こ、こは…?」

(【タタル渓谷】)



ふと地名がよぎったことに疑問を感じた。

タタル渓谷の名は知っている。

来たことも数回ある。

が、一瞬で判別できるほど馴染みの場所ではないはずだ。





「いや、そんなことより俺、は…」

額を押さえると鈍い痛みがあった。



















「………ん?」











何か、聞こえる。



【あちらに行かなくては。…はやく、はやく】

訳の分からない感情。







「なんだってんだ…っ」















一歩進める度に、



一歩近付く度に。







抑えきれない感情が体を駆け巡る。

「歌…?譜歌、か?」





















誘われるように導かれるように引き寄せられるように。







お互いの、姿が、見えた。






















「あ…」

ヴァンの妹、確かティアとかいう女が目を見開いている。





―違う。





「どうして…ここに」











―違う。











「ここからならホドを見渡せる」











―俺が…











「それに…」











―果たさなければ























約束してたからな。























―ならない相手は!



































「違う…」



「?…何か……おっしゃいまして…?」

小さな声をナタリアが拾い、なんでもないと首を振る。







会話が、途切れた。











「…さーぁ、歓迎は後日、ということにして帰りませんか?」

「あ!なになに大佐〜?もしかして疲れちゃったんですかぁ??」

「まぁ!ジェイドでも疲れることがあるのですか!?」

「ふふ、どうでしょうね」





「…おいおい、じゃれてないで帰るならさっさと帰ろうぜ。…お前も疲れてるんじゃないのか?」

ガイがつい、とこちらを見る。



「そうね。とりあえずバチカルへ行きましょう」





皆が歩いて行く中、ガイは無表情に俺を見ていた。

そしてふと笑って、おかえり、と。

「話はまた後でな」















しばらく歩いてアルビオールらしいものが見えた頃、眼鏡……ジェイド、が話し掛けてきた。

「確認にすぎませんが…アッシュ、ですね?」

囁くように。









「……ああ」













俺に言えることはそれだけだった。











NEXT




帰ってきたのはアッシュひとり、でした。



2006、6・22 UP