a ray of hope ―7―















「おや、来たようですね」

「大佐〜はやいですよぅー!」

「そうですか?そうですね、少し彼に聞きたいことがあったので」



ジェイドが視線を投げる。

それに対して彼は目線を合わせることはなく何かを考えるように口元に手を沿えている。

各々適当な椅子に腰掛けたことを確認し、ガイが口を開く。

というのもアッシュから話し出す気配がないからだ。







「聞きたいことが山ほどあるんだが…」







「そう…ですわ、まずは…お話を……」

その声は震えていた。どうやらナタリアは自分で思っているより動揺しているらしい。

アッシュだという事を本人の口から聞きたい。そしてルークのこと……他にもたくさん、たくさん。



大切な幼馴染の2人をどれだけ心配したことか。どれだけ無事を祈ったことか。

しかしその言葉は頭の中を巡るだけで声にはならない。

もどかしくて、ぎゅっと手を握り締める。









「ナタリア」





「っ!」





そのナタリアを静かな声で制したのは、他ならぬアッシュだった。

ひた、とナタリアの目を見る瞳は静かで、昂ぶっていた気持ちが徐々に落ち着きを取り戻す。

「……急がなくとも俺はどこへも行かない」



「えぇ…そう……そう、ですわよね。…ありがとう」



そう、彼はいつもこうだった。焦る自分を落ち着けてくれる。











「分かっていてここに来ているだろうが、俺は……アッシュだ」

皆の視線が集まる。



それを受けてティアが話す。

「えぇ…皆、理解しているわ。無事に帰ってきてとても嬉しく思っているの。

そして貴方は私達が聞きたいことが何か、分かっているはずよ」

「あぁ………レプ……ルークのことだろう」



「はぅあ!言い直したー!」

「おやぁ〜?もうレプリカとは呼ばないんですか〜〜?」



アニスは椅子から転げ落ちそうになり、ジェイドは良い笑顔になる。

「んなことはどうでもいい。茶化すんじゃねぇ」



さらりと流したことで皆がおや、と思った。

「ふぅん……ルークを認めたってことか」

「喜ばしいことですわ」

「そうね、ルークが喜ぶわ」

「…っていうか〜これはルークのことが……」

「アニ〜ス、それ以上は今は駄目ですよv」



はっとしてアニスがアッシュを見ると彼は氷点下の目をしていた。



「えーと〜…この話はこれくらいにして〜。で、ルークは?」

「俺が目覚めた時には存在を感じなかった」



「目覚めた時『には』と言いましたね?では違う時には存在を感知できたのですか?」

「あぁ。俺が目覚める前、あいつの声を聞いた」

小さな声ではあったけれど。



「しかしどうにも記憶が曖昧だ。どこがどの時間かまったくと言っていい程分からない」



「ルーク……」

曖昧だとしてもアッシュはルークの声を聞いている。

それだけでも胸にほわりとした温かみが広がる。



「そして」















「あいつの記憶の欠片が、俺の中にある」









「「「「 ! 」」」」







ジェイドを除く皆が驚く。

それでは大爆発が起きたのだろうか、と数人の顔色が引いていく中ジェイドが口を開いた。



「皆さん最悪な想像をしないように。アッシュは記憶の欠片だと言ったんです。

私の理論では全ての記憶が被験者に残るはずだと説明したはずですよ。忘れたんですか」

「大佐、それでは」

「えぇ、大爆発が不完全ということです」



誰ともなしにアッシュを、というよりもアッシュの髪を見る。

アッシュともルークともつかない色の髪を―。



不完全とはいえども大爆発は間違いなく起こったのだ。

ならば、ならばルークは。



「ルーク、は………」

ナタリアの声が震える。

「ナタリア…」

ティアがナタリアの手を握る。



「ルーク、はもう……帰って、きませんの?」

声が詰まる。









「…………昨日から頭痛がする」

「…?」



的外れのような答えに皆の頭上に疑問が浮かぶ。

「俺は最初、あいつの記憶があることに気が付かなかった。そしてこの頭痛の意味も分からなかった」

「……あぁ、そういうことですか」

「俺には頭痛なんてもんは無かったからな」





「ちょっ、ちょっと待った!」

ジェイドとアッシュの会話についていけない。

「俺達に分かるように説明してくれ」







ひたり、とガイを見る。









「ローレライが、呼んでいる」









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あの…すみません。前回から4ヶ月も経ってしまいました……。

既に連載とは言えません…ね……(がくり)



2007 2・10 UP