a ray of hope ―8―















崩れた柱、元の面影を微かに残す2対の像。





「また…ここに来ることになるとはな……」





もう一人の自分と決着を付けたこの場所、自分の中にあった過去のしがらみを振り切った場所。



そして―――











「……ここにいるんだろう」



この先の道は知らない。が、記憶が知っている。

その最後の記憶の場所に、あいつは―――。























「一人で行かせて良かったんですかー?大佐ぁ」

自分も行きたかったのに、と頬を膨らませながらアルビオールにもたれ掛っている少女にジェイドは振り返る。

強い風に煽られ、長めの髪が揺れていた。



「一人で、行かせなければならないんですよ」



思いのほか真剣な視線とぶつかり、アニスの動作が止まる。







「……あら?アニスどうしたんですの?」

アルビオールから出てきたナタリアに不思議そうに聞かれる。その言葉で硬直がとけた。



「…え?あ、ううん。なんでも……」





視線をジェイドに戻しても見えるのは、風に揺れる長めの髪だけだった。









「……よく考えなさい。今あなたに必要なのはそれだけです」









いつか本人に向かって言った言葉は、風に流されて消えていった。



















瓦礫を踏みながら疑問に思う。

なぜ自分はあいつを呼び戻そうとしている?憎かった相手のはずなのに。



いや、もうその思いはない。あの時自分はあいつを一人の人間だと認めた。

しかし過去の思いが消えた訳ではないのだ。





でも分かっている。分かってしまった。





俺はあいつが憎かった訳ではなかったのだ。



確かに恨んだ。悔しかった。

自分を取り巻く環境が。持って生まれた力が。利用しようとする者たちが。



そのやりようのない思いを己のレプリカとして生まれた相手にぶつけることで、自分の精神が崩壊してしまわないようにしていたのだ。



どんなに酷い言葉をぶつけてもそれを甘受し、少し悲しそうな顔をして、あいつは俺に笑いかけていた。

どんな思いで侮蔑の言葉を聞いたのだろう。





俺の為に生まれ、そして俺の為に消えた。











俺の、半身。











(…あぁ……そうか……)

すとんとその思いが落ちてくる。

そうだ、俺はあいつが。





あいつのことが。











深く深く自分の思考に潜りながらも足を動かし続ける。

そして今なお第七音素を微弱に放出する、あの場所にたどり着く。





「……いるんだろう」



ここに。この場所に。







出て来い。







出てこい。











出てきやがれ!!















「ルーク!!!」











その思いをぶつけるがごとく、地面に剣を突き立てた。









NEXT




そろそろルークに飢えてきました……。

早くアシュルクにしてあげたい…。



2007 3・12 UP