brightly shines ―5―
突然背後から声が聞こえて飛び上がりそうにルークは驚いた。
慌てて振り向くと明らかに年上の男性が気だるそうに歩いてくる。
「だ、誰……」
「おーよく聞いてくれたねぇ! 俺さまはレイ……っとと」
男性がバックステップをすると、先ほどまで立っていた所が抉られルークは訳が分からなくて咄嗟に一歩下がる。
そうだ、アッシュは……と思い振り返ろうとした時、ふいに声を掛けられそちらに顔を戻した。
「一人でどっか行くんじゃねぇよ、ルーク」
「ユーリ!」
剣を肩に担いで歩いてくるのは紛れもなくユーリで、ということはさっきの技もユーリが出したのだろう。
男性は武器を構えていたがユーリの姿を見て構えを解き「あ、青年〜」と呟いていた。
知り合い……だろうか。
「なぁんか怪しい影があるから蒼破刃ブっ放してみたが、あんたかよ」
「ひどいわ、青年」
「まぁあんただと分かってたとしても同じだったけどな」
ルークには2人がどんな関係かさっぱり見えなくて目を白黒させた。
ユーリの言葉にがっくり気落ちしてうな垂れた男性は不貞腐れたようにユーリを見る。
明らかにユーリより年上だと分かるが見た目と裏腹にそれは拗ねた子供のようだった。
「えー、そんなにおっさんに冷たく当たらなくてもいいでしょ〜?」
「……えっと、あの」
「今までのおっさんの行動を振り返ってみた結果なんだがな」
「ひどっ!」
「うさん臭いレイヴンに責任あんだよ」
ルークは早々に会話に割って入るのを諦めた。
少し待っていれば2人の会話も落ち着くだろうと。
ひとしきりああだこうだ言い合って、やっとユーリはルークと視線を合わした。
「ガイが探しまくってんぞ」
「え!」
それはヤバイ。めちゃくちゃヤバい! 怒られる……!
混乱しかけた時にそうだアッシュは、と思い振り返るとそこにはアッシュの姿形もなく木々が茂っているだけ。
「と、いうわけで。おっさんも着いてくからよろしくね。ルーク少年っ」
「へ……?あ、えーと、よろ、しく……?」
何がなんだかさっぱりだがアッシュはこの人を連れていけと言ったのだから一緒に行くことになるのだろう。
ルークはアッシュの言葉が何故か疑わしい物には感じられなかった。
ヴァンに超振動のことを聞いても詳しくは教えてくれなかったのに、アッシュは違ったからかもしれない。
いろいろ聞きたいことがある。今度会ったら聞いてみてもいいだろうか。
……答えて、くれるだろうか。
「何がどういう訳か知らねぇが、おっさんもアクゼリュス行くってか?」
「そーそーお仕事?」
「ふーん、ま、勝手にしたらいいさ。ただ……変な動きしたら容赦しねぇからそのつもりで、な」
ユーリはくるりと反転してさっさと野営の方へと歩き出してしまったので慌てて着いていく。
正直ルークは自分がどこにいるか分からなかったのだ。
それにこれ以上ガイを怒らせるのは得策でない。
戻る途中でガイと出くわしたのでルークは怒られる! と思い、目をぎゅっと瞑り体を縮めた。
だがルークの予想に反してガイはルークの両肩に手を置き、長い長い息を吐き心配した、
と言ったきり右肩に額を乗せて動かなくなったので雷が落ちるとばかり思っていたルークは
逆に慌てふためいてどうしたらいいか分からなくなってしまった。
とりあえずとても心配させてしまったのだと、気付く。
「わ、悪ぃ……」
「…………」
「なぁ、ガイ……悪かったって……」
「……今後こんなことがあったら承知しないからな」
頼むから自分の身分と立場というものを自覚してくれとガイは言った。
ルークはこくこく頷いたがガイには本当に分かっているのか疑問な所だ。
そうしてひとしきり心配したあとレイヴンという男に目をやりどういう人物なのか見定めようとする。
ガイにしてみればルークがいなくなり共に戻ってきたというだけでも、怪しい。
その視線を受けてレイヴンはがりがりと頭をかいた。
「あー……俺様まったく信用されてない。青年、おっさんの誤解といてよ」
「誤解もなにも怪しいもんは怪しいんだからしょうがないだろ?」
フレンが知り合いなのかと尋ねると「まぁ、一応」とユーリは答えた。
「見たとおり胡散臭いおっさんだが、まぁアクゼリュスに行くのは仕事らしい。
少しだけ一緒に行ってもいいんじゃないか?」
レイヴンについて話し合っている3人をよそに、
ルークは先程までアッシュと会っていただろう方向を見つめてぼーっとしていた。
それに気付いたレイヴンが小さく笑ってルークに小声で「また会えるから元気だしなって」と囁きかける。
「会えるのか?」
「いつかっていう具体的なことはなんとも言えないわねぇ。
でも絶対お前らはどうやっても引き合っちまうから安心しなって。
とりあえずおっさんは今のところアッシュの代わりにここにいるから」
意味深な言葉を残して離れたレイヴンの言葉を反芻してみても、
ルークにはよく分からなかったがとりあえずまたアッシュに会えるのだろうと思った。
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(アッシュに、あいたい。はなしてみたい)
2010、2・1 UP